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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
社会福祉法人・社協
九州
事例No.0631
取組の背景
新型コロナ流行に伴うニューノーマルの時代、介護分野のIT関連については非常に取組みの遅れを感じている。
IT分野企業は人気企業も多く、人材獲得についても有利な立場であるが、介護分野の出遅れは否めない。したがって、人材獲得においては常にインパクトを追求する必要があり、下記の取り組みを実践し、人材獲得と定着を促進してきた。
取組の内容
●職員の採用・育成・定着
- 法人内試験(看取りケア・ノーリフトケア)の実施
法人全体のボトムアップを目的として、年に一度、法人内で介護福祉士の育成を実施。キャリア段位として給与にも反映している。質の高いケアの実施や事例研修を行い、職員が率先して教育者として研修の企画や実践を行っている。 - 無資格者の資格取得制度
法人独自で初任者研修を毎年実施し、無資格者ゼロに取り組んでいる。施設管理部門や事務職員も希望者は受講可能とし、費用は法人が負担する。講師は法人職員が務めている。 - 職員専用相談窓口の設置
職場における相談や困りごとが生じた際に、守秘義務を遵守して相談に応じる窓口を設置している。また、ワークライフバランスの変化に伴う離職等の可能性を早期に把握し、適材適所で異動等の提案を行う仕組みもある。 - 各種研修への参加
介護労働安定センターの各種研修に参加。参加した職員により研修内容を他の職員と共有して、業務の洗い出しや改善項目の設定等を行っている。コロナ流行前は希望があれば、県外研修への参加についても積極的に支援していた。数名ではあるが海外研修の実績もある。 - 採用は、法人内紹介制度を設け、入職した場合の成功報酬などの規定を定めて実施している。
- 育成は、新規採用時には3月間の新入職社員研修、無資格者に対しては初任者研修の対応をしている。また法人内には育成に特化した職員を1名教育担当者として配置して、新社会人が仕事以外の悩みも相談できる体制にし、人間力形成の支援を行っている。
- 定着の取組として、福利厚生の充実を図っている。また教育担当者を配置することで、課題の早期発見から対応までを確実に行うことを心がけている。
●業務効率化・職場環境改善
事務部門のテレワーク推進、ペーパーレス推進(FAXの廃止)、メールやSNS活用の推進等によりDX化を図る
- クラウドストレージの導入
テレワークが可能な業種の職員については積極的にテレワークの実施を進めている。個人情報の取り扱いや、事務職などは必要な資料などの持ち出しの課題があったが、これを改善するため、安全性の高いクラウドストレージを導入した。利用者情報も情報漏洩に関する内規を作り、それに則り実施している。 - クラウド型ビジネスチャットツールを活用した情報共有
情報共有の漏れを防ぐため、クラウド型ビジネスチャットツールでの情報共有を行っている。 「休日は見ない、時間外は通知を切る、情報共有が必要な場合は規定のフォーマットに基づいて等」のルールを定めた。共有内容は、利用者の入退去管理であり、退去が発生した場合に全事業所に配信して、入所を希望する方への早期対応が可能となっている。 - 夜勤帯の大きな不安は緊急時にあることから、夜勤者の精神的不安解消のためインカムを導入した。
取組の効果(改善点)
- 管理者や現場責任者が、介護労働安定センターの「生産性向上訓練」の「介護現場におけるマネジメント力強化セミナー」に参加した。自身を振り返る機会を持ち、研修での学びを現場で実践することで、チーム形成にも役立った。法人の当年度の離職率は1割未満となっている。
●採用・育成・定着
- 採用は知人の紹介の方が感覚的には定着率も良い印象である。
●ICT導入等
- タブレットによる介護記録の入力は、手書きに比べ記録に係る時間が大幅に削減され、定時での退社が可能となった。残業時間が削減されて職員の負担が減り、職場環境改善に大きく役立っている。IT対応を好意的に感じる職員も生まれており、好循環ができている。また、利用者の健康管理がグラフ化されることで、効率的に利用者の変化を観察できるようになり、医療との連携に役立っている。
- インカムがあることで、夜間における緊急時の応援体制が確立でき、夜勤者の精神的不安をかなり軽減している。 特にヘルプが発生した場合に早急な対応ができ、身体的な負担の軽減にも役立つ。
- 眠りスキャン導入により、夜間におけるラウンドの効率化を図り、夜勤者の業務改善に大きく貢献している
- クラウドストレージは、BCP対策の一環としても役立ち、また、多様な働き方を可能とし、データの管理や業務効率を推進するうえでも重要な役割を果たしている。自宅からもアクセスができることで、テレワークによって業務を進めることが可能となった。子供が保育園等に通う事務職員などは、月に5、6日のテレワークが可能となっており、業務の効率化もみられている。
- クラウド型ビジネスチャットツールでの情報共有により、リアルタイムでの情報発信と受信が可能となった。業務情報の聞き漏れや伝え忘れが激減した。台風などの災害時における出退勤等について、状況に応じた指示も出せるようになり、事故の未然防止にもつながっている。
★雇用管理責任者の役割について
- 人材確保が困難であるからこそ、人が行わなければならない業務を明確にする必要がある。雇用管理責任者が時代の流れに沿った労働環境を整え、効率的かつ必要なサービスの提供を提案し続ける取組を行っていく。