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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人 中国・四国

事例No.0682

1.取組の背景

 ①介護職員の離職率の高さを課題と捉え、職員同士がお互いに思いやれる働きやすい職場環境づくりが必要と考えた。単発の研修では一時的な効果しか得ることができなかった。そこで継続的に人材育成を進めるため、助成金の活用や理念の浸透・行動指針の徹底をカリキュラムに取り組んだ計画的な研修の実施が必要だった。

②市の生産年齢人口は2040年には現在から35%減少すると予想されている。職員の高齢化も進む中、将来的な人材確保を見据え、余裕がある今のうちに外国人を受け入れOJT体制を整備する必要があった。
③従来型特養の介護を持続可能にするためには、ICTや福祉機器の導入が欠かせないと考え、当初は自施設職員のみで取組を進めていた。しかし、知識や情報収集に限界があり、効果的な活用や定着に課題を感じていた。そのため外部の専門的支援と協力体制の必要性を感じていた。

 

2.取組の内容

2015年から「人間力・職場の安全効率化・働きやすい職場づくりの意識と行動力を高め、主体性のある福祉人として、将来を担う人材の育成を図ること」を目的に労働局の助成金を活用した研修を行ってきた(月1回・2時間、1年間)。本年度で11回目、受講者数はのべ141人となった。これまでの成果としては、5S活動の推進、会議の進め方改革、より良い職場環境づくりのためのコミュニケーションと自己覚知、情報共有の仕組みづくり、【ポジティブ休暇】と名付けた1か月に1人/連続7日~10日間の休暇取得の実現などが挙げられる。コロナ禍ではクラスターの発生により日程変更を余儀なくされた時期もあった。助成金事業の特性上、変更届の提出など一定の事務負担を伴ったが、事前に職員に研修計画を周知することで円滑に実施することができた。毎年9月中旬頃に次年度のカリキュラムについて講師と打ち合わせを行い、施設内の課題や制度改正・関連法など時流を踏まえて検討している。研修開始当初から「理念の浸透」を必修項目とし、共通認識の確立に向けて継続的に取り組んでいる。
研修実施状況を検証した結果、次回の研修や業務改善に結びつかないという課題が判明した為、職員が「最終達成目標(大目標)」と「行動目標(小目標)」を設定して取り組む方法に改めた。しかし期待した成果を得られなかったため、様式を再度見直し、「組織の理念を具現化するために、あなたはどのような具体的行動を実行しますか」という問いを主軸に据えた。これにより、研修成果を単なる感想で終わらせず、組織の方向性と個々の行動をより強く結びつけることを目指した。研修後は講師にも記述内容を共有し、理解度の把握に務めている。1年間の取組を総括する成果発表も行い、受講職員間で学びと成果の共有をしている。

外国人職員の受け入れにあたり、大半の日本人職員が「どのようにコミュニケーションをとればよいのか」「仕事をどのように教えればよいのか」と不安を抱えていた。そこで、現地採用面接の際に職員を同行し、生活環境や文化、宗教観などを直接見て理解を深める機会を設けた。これにより、職員の理解が進み受け入れへの心理的ハードルが下がった。受入準備は、寮の建設、生活必需品の購入など必要な項目をリスト化し、準備の過程を写真で記録する等、誰が見てもわかるよう可視化した。専門用語の日本語教材を用意したが、実際は同国の先輩職員による母国語での指導が効果的であった。また、季節ごとの外出、施設内の飾り付けや行事を一緒に行い、日本文化を学ぶ機会をつくっている。日本語能力試験のサポート体制は、日本人職員の中からボランティアを募って実施しており、外国人職員の日本語レベルに合わせたクラス分け等の工夫を行った。
継続的な教育体制を維持するため、同じ国籍の職員が途切れず在籍するよう、定期的に面接を実施して勤務継続の意思確認を行っている。最初の外国人職員が業務マニュアルを自国語に翻訳し、日本人職員と一緒に福祉機器の使い方や介助方法を動画で作成するなど、実践的で分かりやすい教育方法とした。新人職員が安心して業務を修得できる環境が整いつつある。課題は、業務のICT化が進みタブレット入力が主流になった事で日本語を書く力が低下していること、同国出身者が増えたため母国語で会話をする機会が多く、日本語の会話力の伸びがやや鈍くなったことである。改善策として、職員内研修の感想文や毎月の近況報告を手書きで作成することとした。日本人職員が添削し、コミュニケーションを図る機会としても活用している。外部研修や日本語スピーチコンテスト等にも積極的に参加し、日本語能力の向上を目指している。

入所者の介護度が高くなり、職員の65%以上が腰痛ありという状況だった。積極的な予防対策に取り組む必要があり、2012年に[乗せ替え装置付きストレチャー・入浴用電動リフト・移動用リフト等]の福祉機器を導入した。その後、科学的な介護の実践と介護記録の活用による介護業務の質の向上と効率化に向けて、2015年に自立支援介護研究プロジェクトに参加し、介護記録ソフトの導入を試みた。しかし、導入の目的、使用意義について十分な説明が出来ていなかったため、大半の職員の理解が得られず、結果として福祉機器も記録ソフトの活用も定着しなかった。
その後、2019年頃から施設内での人材研修の成果が表れ始め、県ノーリフティングケア普及セミナー・介護ロボット・ICT導入事例セミナーを受講した職員を中心に「ノーリフティング委員会」を立ち上げた。当初は担当職員のみの自主的な取組であったため、介護職員全員がスライディングボードを使って移乗介助を行えるようになった程度で、十分な成果を上げるには至らなかった。
そのような中、県社会福祉協議会主催のノーリフティングケア普及啓発事業の支援を受けた。介護職員が福祉機器の正しい使用方法を学ぶ機会を得たことで、職員に成功体験が生まれ、自信と意欲の向上に繋がった。これを契機として、2021年には介護労働安定センターの伴走支援のもと、ICT導入に挑戦した。職員自らが選んだ介護ソフトや見守り機器であったことから、混乱や反対意見もなくスムーズに導入することができた。さらに2025年には、取組内容①で行っている施設内研修において、生成AIを活用して、業務の棚卸、業務マニュアルの見直し、議事録作成に取り組んでいる。これらの継続的な取り組みにより、職員一人ひとりの意識改革と業務効率の向上が着実に進んでいる。

3.取組の効果(改善点)

①助成金の活用
・情報共有のツール活用
・LINE WORKSを活用し、申し送りやマニュアル等の情報を一媒体にまとめる事で確認作業の手間を軽減できた
・You Tubeを活用してOJTの仕組みを整えた。指導のばらつきが解消され、指導する側、受ける側双方の時間短縮と効率化が図れた。有給取得率17%増 離職率19%減(対前年比)
②外国人の受け入れ
・計画的な教育体制構築の結果:R6年度介護福祉士1名合格。市国際交流協会主催「スピーチコンテスト」に2020年から毎年参加(最優秀賞3名、準優秀賞1名)
③ガイドラインに沿った生産性向上・ノーリフティングケアの実施
・導入後95%の職員について、身体的な負担が軽減した。
・インカム8台→13台に増やし、多職種のスムーズな連携。「人を探す」「戻って呼び出す」等の無駄の削減で、業務効率化、移動動線の短縮に成功。1日平均15分以上の改善
・見守り機器3台→10台に増加。専用モニターの利用で事故リスクを軽減できた。導入後、入眠中の訪室なしで動線の短縮。夜間訪室減少で睡眠状態が改善し、精神薬、眠前薬の使用者20名→15名に減少。モニター確認により訪室の頻度が70%減少。見守り機器の使用により、R6年度の夜間転倒事故0件を達成
・記録ソフトとの連携で自動入力が可能になり、記録時間1日10分短縮、紙削減率53%

 

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