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事例No.0674
1.取組の背景
特養の開設から15年以上が経過し、ナースコールの入替を検討していた。様々な展示会に足を運んだり、セミナーに参加したりして情報収集をしていたが、知れば知るほどどれが自施設に合っているのか分からなくなり、選定方法に悩んでいた。
また、生産性向上委員会を立ち上げて取組を始めようと考えているものの、進め方がわからず、不安があるという状況であった。
介護労働安定センターによる伴走支援が始まるなかで、業務の課題整理をしたところ、「介護記録業務で重複している部分が多い」「入浴時の洗濯物を回収に行ってもタイミングが合わない」「夜遅くまで事務室の電気が煌々と点いている」などの課題があげられ、そこから業務改善活動が進められることとなった。
2.取組の内容
業務改善活動をスタートする前に念入りに体制づくりを行なった。厚生労働省の「生産性向上に資するガイドライン」を参考に、手順に沿って準備を進めていった。
手順1:初めに、取組の趣旨と宣言を職員玄関に掲示し、全職員に周知した。人数が多いと意見がまとまらない為、中心メンバーを「プロジェクトチーム」に選抜し、そこで検討した内容を「生産性向上委員会」で決定していく体制を整えた。
手順2:次に「課題把握シート」と「気づきシート」を全職員対象に実施した。業務における「ムリ」「ムダ」「ムラ」を抽出し、グループ化して課題を整理した。
手順3:整理した課題をもとに「課題分析シート」で取り組むべき課題を決定し、「改善方針シート」を活用して取組内容や役割を具体化していった。その上で「進捗管理シート」で取組の計画を立てた。
この取組において、当施設が心がけていたことは、「職員全体で取り組む」ということだった。
プロジェクトメンバーや委員会の参加者だけが理解していても、全員の理解と協力がなければ改善活動の成果は得られないと考え、周知するための掲示やアンケートの回収を全職員対象とするなど、工夫した。
プロジェクトチームで行った課題整理や計画立案の検討内容も、模造紙をそのまま掲示し、集めた意見の結果がどうなったのか等、取組の状況をわかりやすく伝えるようにした。
課題を整理し、実際に取組活動を決める際も、介護業務だけでなく、なるべく多くの職種が関われるよう配慮した。
プロジェクトの立上げから、時間をかけ、丁寧に活動計画を立てていったことは、その後の取組の地盤づくりとなった。
計画をもとに進められた「業務改善活動」
取組は、改善効果、重要性、取り組み易さを考慮して立てた計画をもとに進めていった。
活動1:最初は、取り組み易さと成果が出やすいことから、「事務室の消灯時間の設定」に取り組んだ。取り組み易い活動から始め、成果を実感することで「やればできる」という雰囲気を作る意図があった。すぐに夜遅くまで電気が点いていることは無くなった。消灯時間を意識した結果、時間外勤務の減少にもつながった。
活動2:次に取り組んだのは、「洗濯業務の見直し」である。洗濯とリネン業務を専門で行う部署があり、介護業務との連携でムリやムラが課題となっていた。業務の流れを改善する方法について指導を受け、洗濯業務を深堀りしたことで新たな気づきもあった。当初、課題となっていた入浴後の衣類の回収については、改善活動を行うことで入居者の入浴時間や入浴介助業務に影響が出ることから、取組の趣旨に立ち戻って取り組まない判断に至った。一方、衣類洗濯時の記名確認は、無記名の頻度を考慮し「行わなくてよい」こととなり、業務の効率化ができた。
活動3:現在進行形で取り組んでいるのが、「記録業務の重複削減」である。パソコンの介護記録システムと紙の帳票の重複が散見されていたが、記録業務の整理方法について指導を受け、情報収集と課題整理を繰り返しながら取組を進めていった。初めは拒絶的な反応の職員もいたが、先行ユニットで試行し、全体に進める工夫をしたことで、理解を得て安心してもらいながら進めていくことができた。記録業務重複の改善は、結果的に、申送り時間の短縮にもつながっている。
どの活動においても、課題を具体的に把握し改善策を捻出し、できることから取り組むことを心がけ、着実に成果を上げている。
ICT導入に関する取組
ナースコールの入替を検討するにあたり、導入業者が薦めるがまま機器を入れ替えることに疑問を感じ、まず管理者が情報収集を始めた。すると、ナースコールだけでなく付随する機器にも様々なものがあることが分かり、自施設に合った機器を選んで導入したいということになった。
自施設に合う機器を選定するには、管理者だけでは判断が難しい。介護主任に相談したところ、福祉機器展やセミナーに参加したいと申し出があり、ユニットリーダーとともに参加することとした。
福祉機器展やセミナーに参加するだけでは、情報量は増えるものの、「自施設に合った機器」を選定するのは難しいままだった。そこで、専門家のアドバイスを受けようと事業に申込みをした。専門家から、ナースコールを選定していく上での検討手順やポイントについて指導を受け、迷いや悩みを解消することができた。
アドバイスを参考に、生産性向上委員会のメンバーを対象に導入予定機器の体験会を行なった。現場職員に選定の理由を説明し、特色を上手く活用できるよう準備を進めている。機器の導入はこれからだが、無線型のナースコールへの移行、PHSはスマートフォンに、できればインカムも取入れていきたいと考えている。見守り機器や記録ソフトとの連携も考慮した。
一時は「本当にどうして決めたらいいか分らない」という気持ちだった。しかし「施設に合った機器を導入しなければ、活用もうまくいかないのではないか」という考えのもと、アドバイザーの力を借りる勇気を出し、現場の声を聞いたことで、納得のいく機器を選定することができた。
3.取組の効果(改善点)
取組を始めた初年度であり、成果や効果を見るには早いかもしれないが、変化を感じられることは数多くあった。
それぞれの取組で具体的に課題を分析し、できることから確実に成果を積み重ねていくという考え方は、プロジェクト以外の日常業務にも応用でき、他の委員会の取組や個別のケース検討においても活かされている。業務だけでなく、ケアの質の向上にも役立っている。
このことは、職員の「働きがい」にもつながっており、本年度になってからの介護職員の離職者数はゼロとなっている。
改善活動の取組では、事務室の消灯時間を設定したことで、事務職員と相談員5名の残業時間の合計が、実施前の60時間から実施後に35時間まで減った。
時間に追われながら業務にあたっていた洗濯担当者は、省略可能な業務を廃止したことで、6回分が各5分ずつ短縮でき30分程度のゆとりが生まれた。介護業務や入居者のペースを急がせることが減り、チームワークが改善した。
記録業務の取組では、まだ試行ユニットでの実証のみだが、記録システムを活用することで15分かかっていた申し送りが5分でできるようになった。
ナースコールの導入はこれからだが、専門家に相談したことで、検討や情報収集に費やす時間を数ヶ月単位で短縮することができた。
全体としては、相談支援を活用することで、取組方法を習得できたことが一番の改善点である。