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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人 九州

事例No.0668

1.取組の背景

 改革は大きく2つのフェーズを持つ

フェーズ① 

現理事長が副施設長に就任した2009年に遡る。介護保険制度により「措置から契約へ」のスローガンの下、社会福祉法人の変革が求められていたにも拘わらず、10年経っても変化しきれていなかった。職員間の不協和音と利用者やご家族からのクレームが散見され、その淀んだ空気と荒んだ人間関係に衝撃を受けた。強い危機感に苛まれたことにより、「改革‼」の2文字を心に決し、組織全体の把握と改革に乗り出した。

フェーズ② 

2023年、組織改革と同時並行で事業の拡大を追究する中、「優秀な人財を特養で養成し、新規事業職員として輩出する」という人事戦略を遂行していた。しかし、大黒柱たる特養の離職率が急激に悪化した(過去7~9%が、昨年は18.5%に‼)。入社1年未満の職員の離職率の増加が顕著であった。

 

2.取組の内容

離職率上昇に対する改善の取組について

  

①2024.4総務部と事業部の機能を明確に分離し、専門性の高い組織体制を構築

・事業部に3名の課長体制を導入し、意思決定の迅速化と顧客対応力を強化

・総務部内に人事戦略課を新設し、人材戦略の強化と従業員サポート体制を充実

②入職1年未満の職員へのWサポート面談体制(教育担当・人事課)を導入

・毎月の面談を実施

 入職後7日面談・1ヶ月面談・2ヶ月面談・3ヶ月面談(理事長面談)を、チームと人事課の2つの異なる視点で実施し集中サポート。その後も人事課の面談は入職12ヶ月経過まで毎月実施し、きめこまやかなサポートを行っている。現在、Wサポート面談体制にメンターを加えトリプルサポート面談を構築中。

③組織サーベイの導入

・毎月アンケートを実施し、従業員やチームのコンディションをカテゴリ別「やりがい・ミッション・健康・支援・人間関係・組織」に可視化。自由コメント欄もあり、職員の声なき声を拾い、②(面談)+データに基づく科学的アプローチのWサポート体制を確立

 職員の声→データ分析→課題抽出→解決策立案→サポート実施→効果測定(組織サーベイ)→職員の声(このサイクルをまわす)

④その他の取り組み

・職員の可能性を引き出す「アイデア提案制度」

・資格取得支援制度

・人事考課制度(業務力評価と人間力評価)

・女性がん検診(就業中に検診を実施、職員の健康管理をサポート)

・病気休暇補償(1か月間の給与を補償し、収入不安を解消して治療に専念)

・食事補助「オフィスでごはん」導入。福利厚生でおかずを100円で購入可能  

 

DX化にむけた取組について

(1)2024.1「生産性向上・DX推進チーム」の立ち上げ(組織全体の意思統合)

 メンバー:コアメンバー6名+オブザーバー13名

 目的:①介護報酬改定に備える

    ②法人全体(特に入所系サービス)の生産性向上やDX推進を図る

    ③①②を叶えることで利用者への個別支援の充実や職員が働きやすい職場作りを推進する

(2)2024.2 コアメンバーによるキックオフミーティング開催「生産性向上・DX推進チーム」

(3)2024.3 CareTEX東京へ参加(管理職、一般職員の垣根なく展示会に派遣)

 目的:①これから進めるDX化と生産性向上のための知識を得る

    ②製品等を実際に見ることで、介護DXの具体的なイメージを掴む

    ③これからの活動に対してモチベーションを高める

(4)2024.3 DX化に向けての社内アンケート調査を実施

(5)2024.4 各事業所への導入機器の検討・見積

(6)2024.5 デモ機の試用運用

     「生産性向上の取組の普及・拡大に向けた介護事業所向けセミナー(厚生労働省)」受講

  2024.8 「介護分野における生産性向上の取り組みの進め方(厚生労働省)」受講

(7)2024.9 各事業所における生産性向上のキックオフミーティング開催

(8)2024.10 令和6年度介護サービス事業所ICT導入支援事業「申請予定」

 

2023.11 法人「Re.ブランディングチーム」の立ち上げ

 目的:求職者から選ばれ支持され続ける施設となるために「ブランディング」戦略により、法人の魅力を発見し、競合他社との圧倒的な差別化を図り、価値を再構築する。

    また、このプロジェクトチームがブランディングに取り組むことで、現場の声を活かした意思決定や組織運営ができるボトムアップ組織を構築する。

メンバー:15名、オブザーバー2名

 第1回〜5回:法人の歴史とこれからの未来を知る。らしさ共有セッション。3C分析・SWAT分析・クロス分析を行う。提供価値の構造化「ビジョン・ミッション・バリュー」発表・まとめ(計5チーム)

 第6回〜8回:各チームのプレゼン、代表チームのプレゼン(理事長へ)→ビジョンの決定

 第9回   :採用3C分析、MECE、ロジックツリー作成

 第10回〜11回:ペルソナ設定

 第12回〜14回:最終プレゼンに向けて、コンセプト動画の確認及びWEBページ確認

 第15回〜16回:最終プレゼンへの返答とインスタ投稿計画立案

2024.7 ホームページコーポレートサイトリニューアル

2024.9 採用サイトの初リリース

 現在、ブランディングチームはHP更新、SNS発信(365日配信)、イベント企画等、法人の顔として重要な役割を果たしている。これら活動を通して、企業の価値や魅力を発信し、ステークホルダーとの関係構築を深めることができている。

 

3.取組の効果(改善点)

・面談により、経営層・管理者・職員が思いを共有し、互いを思いやる気持ちが職員の満足度を高めている。チームでサポートすることで、入職後まもない職員の状況を本人を交えて共有化できている。

・アイデア提案制度により、職員の声が採用され実際に運用されることで、意見の出しやすい風通しの良い職場環境が構築できた。

・病気休暇補償制度により、一定期間の収入の不安が解消し、治療に専念できるようになった。回復のプロセスで職員同士がお互い様の精神をもち、状態に応じて勤務の対応を検討しながらサポートする体制が整った。現場復帰できる職員が増え、人材の定着につながった。

・組織サーベイにより、項目により変動のある職員やチームにスピード感をもって対応することで、職員の組織に対する信頼度が高まった。 

・人事考課制度により評価が見える化され、職員のモチベーションの向上、職員同士の良い刺激に繋がった。

・職場環境の改善で有給取得率がアップした  

 78.5%(令和4年度)→82.5%(令和5年度)

・処遇改善による平均の年収増加率 116%

・自組織での採用により、人材紹介会社への支払手数料が減少した

 ¥4,800,000(令和5年度)→ ¥200,000(令和6年度上半期)

・離職率が低下した

 18.5%(令和5年度)→ 5.0%(令和6年度上半期)

 

 

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