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看護小規模多機能型居宅介護事業所 社会福祉法人 九州

事例No.0667

1.取組の背景

  開設したばかりの新しい事業所であり、基本的に目立った課題は無かった。しかし、新しい事業所であるがゆえに、集まった職員たちは異なるバックグラウンドを持ついわゆる「寄せ集め」のチームだった。そのため、職員が法人理念である「感動・感激・感謝」を深く理解し、協力し合いながらチームとして一丸となるためには、時間と努力が必要だった。

 また、入職時に「慌てない・焦らない・近道はない」と伝えており、事業所内では「人と人との付き合い」に重きを置いているため、職員が利用者と信頼関係を築き上げるには十分な時間と濃密な関係構築が不可欠であった。成果がすぐに出ない中でも、職員があせることなく長期的な視点で取り組んだ結果、現在、1年6ヶ月を経て人間関係と絆が築き上げられてきた。

2.取組の内容

賃金・評価制度の充実

  職員の努力と成果が賃金に反映されるよう、明確な評価基準(法人が目指す人材像)と人事考課制度を導入している。職員が成長するための目標を設定し、その達成度に応じて公正に評価する。賞与に反映させるとともに、評価の数字も参考に昇給や昇格が決まる仕組みにしている。

 また、自己評価や複数の上司による多面的評価が行われることで、個々の業績やスキル向上が正当に評価されるようになっており、職員の成長意欲を支えている。大切にしているのは、職員と上司の信頼関係の構築である。職員が思っている評価と上司が思っている評価のズレを個別面談で整え、互いの理解度を高めて信頼関係を構築している。

 

人間関係管理

  職場内の人間関係を円滑に保つため、職員同士によるメンタルヘルス支援やストレスマネジメントをその都度実施している。また、法人理念「感動感激感謝」の意味するところは、単なる介護業務にとどまらず、心と心が響き合うケア(人は命令では動かず、心からの配慮があってこそ心が動く)を提供することである。日々の業務において、職員一人ひとりに対しても「目配り・気配り・心配り」を意識している。このような意識から、職員同士も困った時はお互い様という精神で、互いを尊重し支え合う環境が築けている。職場内での相談窓口やチーム内でのフィードバックを推奨し、問題解決やコミュニケーションの向上に努めている。

 また、職員間のコミュニケーションが円滑になるよう、日々のミーティングや全体会議が実施され、組織全体で情報を共有できる仕組みが整っている。スマートフォンを駆使し、記録や情報、申し送り事項を、職員間でいつでも把握できるシステムとし、的確に情報共有を行えている。

 更には、職員が安心して長く働けるよう多様な支援を整備している。78歳定年制度で長期的なキャリア形成が可能になっている。退職金も2段階にしたことで充実し、職員の将来をしっかり支えている。加えて、SOWEL倶楽部を通じたレジャー施設や旅行サービスの利用も可能で、互助会による冠婚葬祭支援や、海外研修を含む教育制度により、職員のリフレッシュや家族との時間を大切にするだけではなく、職員の成長と自己実現もサポートしている。

  

業務効率化:ICT導入による業務負担軽減

 ICTツールを活用して業務効率を高め、職員がケアに集中できる環境を整備している。インカム機能を活かし、そのマイクでケアをしながら介護記録の音声入力が可能というシステムを導入した。結果、記録業務の時間が大幅に短縮され、ケアにより多くの時間を充てることができるようになった。何よりも記録の簡素化により、余裕を持ったケアの提供ができるようになった。時間外労働も少なくなり、働きすぎの予防にも繋がっている。

 音声入力システムだけでなく、バイタル測定機器の導入により、記録業務が迅速に行える体制を整えた。職員はより直接的なケアに時間を割くことが可能になっている。

 また、リフトによる抱えない介護を実現し、職員・利用者双方の安全・安心を守っている。

 職員が心身ともに健やかに働ける環境だからこそ、日々の仕事に対する安心感が高まり、長期的な勤務継続が可能となっている。

 このようなICT導入により業務効率が高まり、職員が本来のケアに集中できる環境が整ったことで、利用者満足度の向上に寄与するとともに、職員のやりがいも増していると感じる。

 

3.取組の効果(改善点)

 当該事業所では、病気の悪化により80歳の職員が退職したが、これ以外の退職者はおらず、現在の離職率はゼロを維持している。また、職員の登用と育成に注力しており、この1年間で6名の職員を正職員に登用した。さらに、収支も安定しているため、年間の賞与支給額は4.0ヶ月以上を実現した。また、昇給額は一人あたり最低4000円以上、加えて決算手当も支給できた。また、2024年度には、インカムを装備して、ケアをしながら音声によるリアルタイム記録が可能な「ハナスト」を導入し、職員一人あたりの記録作業時間が1日約1時間短縮されている。その結果、2024年3月には職員全体で66時間あった時間外労働が、10月には7時間まで大幅に減少した。現在はほぼ時間外労働が発生していない。

 さらに、移動式リフトを導入して抱えない介護を実現したことにより、昨年度の開設以来、腰痛による事故は一件も発生していない。

 

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