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事例No.0664
1.取組の背景
①地域包括ケアシステムの構築に向け「生産性の向上」をはじめ、厚労省ガイドラインにある『業務改善7項目』に取り組むむ為には、方針の明文化、組織体制の構築等が重要であると認識した。
②『気づきシート』を活用した現場目線の課題抽出が極めて重要で、新処遇改善加算(Ⅰ)を算定するためにも、最重要課題の一つであると認識した。
③AIが急速に進展する中、厚労省の『デジタル中核人材養成』研修は必要不可欠だと考えた。最後は“人材育成”に尽きるという認識を再確認した。
こうした取組を通じて生産性を高め、『ケアの質の向上』と『情報共有』を図る。そしてエンゲージメントを高め、『永く働きたい』『成長が実感できる』職場を志向し、「地域包括ケアシステム」の構築において、地域になくてはならない事業所を目指したいと考えた。
2.取組の内容
厚労省ガイドライン『業務改善7項目』への取り組み
1.職場環境の整備(5S)…まず清掃。こだわりは「全事業所での洗車の実践」。「気持ち良い送迎」宣言。事務所では「洗車は誰にも負けない」と事務長自ら率先して行なった。
2.業務の明確化と役割分担
(1)業務全体の流れの再構築
①生産性向上委員会の指針策定と推進体制の整備(委員14名:統括リーダー1名、サブリーダー4名を指名)
②介護労働安定センターの専門家派遣による伴走支援を受ける。原則毎月1回。
③優先課題の洗い出し 等
(2)テクノロジーの活用
①眠りスキャン(見守り支援システム)ベッドを全数(100台)導入した。介護記録システムとの連動によってスマホでの把握が可能となり、スムーズな緊急時対応や記録業務の効率化、入力漏れや転記ミス防止につながった。また、夜勤職員の心理的・精神的負担を軽減できた(空振り介護の回避)。短縮できた時間をケアに充てることで、ケアの質向上と満足度向上につながった。
3.手順書の作成…動画作成アプリ「キャンバ」で手順書の動画(ユーチューブ)を作成した。今までは文書だったが、初の画期的な取組(こだわり)。見える化で、新人、外国人職員にも理解が容易となった。今後は外国人自ら作成することを検討。
4.記録・報告様式の工夫…タブレット端末(音声入力可)を導入。請求までの一気通貫型の記録ソフトを導入し、記録時間、転記作業が削減できた。
5.情報共有の工夫…骨伝導式インカムを導入予定。
6.OJTの仕組みづくり…気づきシートで職員62名から152項目を抽出。再優先課題を絞り込み、「電動式3モーターベッド」に全面的に切り替えた。現場の声を(ボトムアップ方式)で取り上げることでモチベーションアップに繋がった。
『気づきシート』を活用
『気づきシート』を活用したボトムアップ型の課題、問題の抽出は極めて重要と認識していた。職員62名全員が提出し、152項目を抽出した。全件開示すると現場が混乱をきたすという意見もあり、リスクも懸念されたが、情報共有が重要との認識にたち、全件開示に踏み切った。結果、問題意識の共有ができ、混乱もなかった。
「腰痛持ちの職員があまりにも多い」ことがわかり、「職員は腰痛を持ちながらも、利用者のために働いてくれている」との意識、そして職員に対する感謝が本部に生まれた。「何とかせねば職員がつぶれる(腰痛での離職は避けねばならない)」との危機感と改善意欲が高まり、すべてのベットを『3モーターベッド』に切り替えることを理事長に進言し、承諾を得た。
導入効果は極めて効果が大きく、安全・安心な職場環境に転換できた。
導入あたっては、業者デモで現場職員が比較検討を行なった。また、手順書として動画を作成した。キャンバを使っての作成、動画の長さ、職員による説明ナレーション、動画と音声のバランスなど大変苦労した。
①生産性向上プロジェクトチーム立ち上げとリーダーへの「手当」支給(「手当」は新設)。
ICT化への更なる取組のためには「生産性向上プロジェクトチーム」の立ち上げが不可欠。特筆すべきはプロジェクトチームのリーダーに、初めて『キャンバでのユーチューブ動画』作成を成功させた女性を抜擢したこと。また、「手当」を新設し、他の4名のサブリーダーにも支給することにした。
②DXに強い人材育成
AIが急速に進展するなか、厚労省の『デジタル中核人材養成』は必要不可欠な研修。最後は人材育成に尽きるということを再認識した。令和6年度の『デジタル中核人材養成研修に応募(統括リーダー)して研鑽を積んでいる。
③介護労働安定センター支部主催の「生産性研修(6時間コース)」への参加
事務長と統括リーダーの2名が参加し、更なる知識の習得、スキルアップに努めている。
④ガイドライン“理念・行動指標の徹底”…今後は、ノーリフティングケアが取組むべき課題であると位置づけ、推進に向けた人材育成(指導者養成)に努め、安全・安心なケアを志向している。
県社会福祉協議会が開催する「ノーリフティングケア研修」に4年連続で参加し、指導者を養成している。
⑤指導者の育成による外国人人材の安定的確保
指導者が外部研修の場で発表するなど、指導力の研鑽に励んでいる。(テーマ:「技能実習生を受け入れて~日本のおもてなしに笑顔で仕事~」
こうした取り組みが、生産性向上やケアの質向上、情報共有の円滑化に繋がり、法人と職員のエンゲージメントを高めている。『働きたい』『職員が成長する』職場を志向し、「地域包括ケアシステムの構築」において地域になくてはならない事業所を目指している。
3.取組の効果(改善点)
◆手当等
〇R5年 冬季賞与 1人平均 24,000円上乗せ支給
〇R6年 リーダー手当(新設)…3,000~5,000円
◆書類作成業務の削減 R4年 39% R5年 62%(R6年 目標75%)
◆書類削減量 R4年度47% R5年 73%(R6年 目標83%)
◆電動式3モーターベッドの導入効果…極めて大きく、安全・安心な職場環境に転換できた
<導入目前リスク> ⇒ <改善した、やや改善した回答割合>
・移乗時やオムツ交換時に無理な態勢になり腰痛のリスクが高い ⇒ 97%
・急変時の移動に時間がかかり、見守りが手薄になる ⇒ 95%
・利用者の状態に合わせたベッドごとの移動が困難 ⇒ 95%
・リクライニングが出来ず、居室での食事対応ができない ⇒ 90%
・リクライニングが出来ず、誤嚥のリスクがある ⇒ 90%
・ベッド移動が重くて身体的負担が大きい ⇒ 90%
◆離職率等の推移 R3年 R4年 R5年
〇離職率 7.94% 7.35% 10.45%
〇介護福祉士の割合 79.41% 82.35% 81.25%
〇平均勤続年数 9.2年 8.8年 9.0年
〇有休取得日数 9.6日 8.9日 8.7日