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事例No.0663
1.取組の背景
設立当初からの法人理念である「3Yの心(人生の最終路を心安らかに、喜びにあふれ、豊かな気持ちで生きていただきたい)」をご利用者に必ず実現したいという全職員の強い信念に基づき介護サービスを提供している。
運営の三本柱として「人材育成」「体にやさしく美味しい食の提供」「快適な居住環境の提供」を掲げており、取り組みにあたっては、①「利用者中心」、②「豊かな生活提供」、③「愛情」、④「前進」、⑤「希望」を行動方針として職場に浸透させている。実現に向けて理事長の、職員の職場満足度・モチベーション向上が絶対不可欠であるという「職員ファースト」の熱い思いに基づき、①働きがい・働きやすい職場づくり、②職員の負担軽減、③専門性の高い人材育成、④人事・キャリアパスの公平感・納得性の担保、④グローバル・先進的な技術の習得を重点的な取り組みに位置づけている。
2.取組の内容
育成型人事考課制度の導入
1.目的:法人理念である3Y実現に向けて、職員が高い意欲と満足感を持ち職務遂行することが必要であることから、納得性の高い人事評価制度を制定する必要があった
2.制度設計における配慮:(1)職種間共通の評価基準を設定する。(2)求められる業務遂行レベルに達成するために必要な知識・技術・手段を示す。(3)納得性を高めるため上司・部下の双方向型の面談を設定する。
3.ポイント:(1)「職能要件書」の作成①職務・業務毎に難易度・習熟度の組み合わせにより9段階に分類し、求められる職務遂行レベルを示した。②各職務遂行レベルに到達する為の具体的な手段を示した。(2)「目標面接制度」を導入①前期:目標設定・キャリアアップ計画設定、課題等の共有、後期:達成状況の振り返り、評価のFB。②法人理念・事業計画達成に向け、事業所・チーム・個人の達成目標・役割を設定した。(3)モデル賃金を視える化した。①10・20年後のモデル賃金を作成し、職員のキャリアデザインに役立てている。
4.工夫した点:(1)「職種間共通の評価基準」における根拠と公平性の担保:職種間レベルを合わせるために、各職種管理者で再三擦り合わせを行った上、職員にも意見照会した。※意見・コンセンサスを尊重し修正を実施。(2)数値的な根拠に基づく「職能要件書」の作成と目標設定。(3)資格取得に対するモチベーション向上に向けて、「資格手当」を多種設定した。(4)「試験対策講座」を開催し支援した。(5)制度の理解促進と定着に向けて、施設長自ら「管理職・職員に対する説明会」を開催した。
5.課題:事業環境の変化・求められる人材像の変化を踏まえた制度への変更を進めている。
グローバルかつ先進的な独自人材育成制度の構築
1.目的:「3Yのこころ」実現に向け、国内・世界の先進技術等を習得して職員の専門性を高めるとともに、キャリアアップに対するモチベーション向上を図る
2.ポイント:(1)入社後毎年、職員として求められる技術等の確実な習得に向けて、職場内PDCAサイクルを活用、(2)福祉先進国の進取的な技術等を先駆けて取り入れた研修の実施、(3)福祉先進国と相互人材交流を実施して優良技術の習得、(4)優良事例の水平展開を図る機会の設定、(5)地域の福祉人材育成に対する貢献
3.取り組み:(1)「階層別研修制度」を制定し、キャリアアップに向けて計画的に運用している。講義に演習+OJTを組み入れて確実な習得を図っている。(2)タクティールタッチ研修、ターミナルケア研修、音楽療法、コンタクトマン制度などの先進的・専門性の高い技術等を取り入れた人材育成を実施している。(3)現場で取り組んでいる実践事例(8050課題を抱える家庭支援等)を発表する「事例研究発表会」、調理技術向上をめざした「ごちそうグランプリ」などを開催し顕彰(金一封付)することで技術向上に対するモチベーション向上を図っている。(4)社会福祉士、介護福祉士などの資格習得をめざしている学生等の現場実習を積極的に受け入れることにより、次世代を担う福祉人材の育成支援に貢献している。
4.工夫した点:(1)研修時間の確保:業務とのバランスを図るため、管理者・間接部門からの支援、「お仕事サポーター」の充実による間接業務の効率化などに取り組んでいる。(2)研修内容の習得:習熟のために、速やかに現場で活用することとしている。(3)モチベーション向上:スキル習得に向けたモチベーションの向上は重要であることから、個々のキャリアパスを具体的に作成している。
トータル的な職場・労働環境の改善
1.目的:「3Yのこころ」実現に向けて、職員の職場満足度の向上を図る
2.ポイント:①直接ケアの時間を増やすために間接業務の効率化を図る、②職員の負担を軽減し、時間外削減、休憩時間の確保を図る、③バイタルデータ等を活用し根拠のある介護を実践する、④ワークライフバランスを推進する、⑤職員の心理的安全性を確保する、⑥処遇改善、家族を含めた福利厚生の充実を図る。
3.取り組み:①「お仕事サポーター」制度(年齢不問、勤務日も希望)を先駆けて導入し、シーツ交換・掃除等の間接業務を行っている。②設立当初から介助リフト、コミュニケーションロボット等を導入するとともに、県助成金を活用し介護ソフトバイタル連動機器、見守りシステムを導入している。また、本年度もカメラ付き見守りセンサー+連動スマートホン、センサー収集データ自動記録システムを導入した。③家庭の理由による離職の防止のため、常勤から自由度の高い非常勤への変更、キャリアアップをめざす職員のために非常勤から常勤への変更を柔軟にしている。④ハラスメント防止規定、ハラスメント防止宣言、専門家による定期的な研修の実施、カスハラ対応に向けた組織的防衛体制の構築などに取り組んでいる。⑤処遇改善加算は制度開始時から最上位区分を取得し(新加算も取得済)、更に多岐に渡る資格手当を支給して資格取得支援を行っている。また、買い物ポイント(年間1.2万円)の付与、プロ野球年間指定席の確保などを行っている。
4.工夫した点:①「お仕事サポーター」配置、ICT機器の導入にあたっては、業務の棚卸、視える化を行い、3Mの解消を図った。②配置・選定にあたっては、全職員と対話し、職員ファーストで配置・導入場所・機器等を決定した。
3.取組の効果(改善点)
定量的な成果
・離職率:過去10年間の平均が8.2%。介護労働実態調査の平均値より大幅に低く人材の定着化が図られている。
(離職理由の大半がご主人の転勤等であり、ネガティブな理由による離職は少ない)
・残業時間:職種間の差はあるが、平均10H/月程度。
・休憩時間:確保が難しい場合は、代替休憩を取得するルールが定着している。
・年休取得率:全職員が法定取得日数5日を完全取得。取得率は毎年改善されている(平均12.6日程度/年)。
・育児休業取得:令和3年度~令和5年度まで延べ8名、令和6年度は6名(男性取得3名)が取得。取得しやすい職場環境となっている。
・正規⇔非正規の変更 *平均5件/年
定性的な成果
・育成型人事考課制度:法人理念の共有、キャリアパスを見据えた研修計画の設定により、共通目標・課題が生まれ、上司・部下のコミュニケーションが活性化されて組織全体に活気が溢れてきた。
・福祉先進国との人材交流:これまで延べ35名の修了生が提供する先進技術によるケアが定着したことで、ケアの質向上が図られた。ご利用者の満足度も高く、施設稼働率は100%を維持している。
・調理の分野では「真空低温調理法」「凍結含侵法」を先駆けて導入し、安心・安全で色や香りを楽しめる食事を提供することで高い評価を得ている。