- ホーム
- 分野から事例を探す【施設】
- 事例一覧
- 事例No.0662
事例No.0662
1.取組の背景
令和3年に行った「全職員対象の満足度調査」では、多くの職員から「働くのが辛い」「誰かに職場を紹介したくない」「賃金が低い」等、組織の考え方や処遇に不満の声が寄せられた。法人側と職員の事業運営に対する見解に相違があった。
その要因として、①法人の方向性が不明瞭、②①に伴う管理職員の孤立、③課題を課題として捉えない組織風土、が挙げられる。将来に渡り地域福祉向上の役割と責任を担う法人として事業を継続し、職員が将来に渡って夢や目標をもって働き続けるための組織改革に取り組むことになった。
2.取組の内容
1.管理職員研修
これまで職員の登用は年功制で行われてきた。そのため、部下への指導・育成が難しい管理者もいるという状況があった。そこで管理者のキャリアとマインドセット形成により、組織内で長年形成されてきた「やってもどうにもならない感」から「よい方向に変わっていきそうだ感」を体感する研修に取り組んだ。(外部講師により定期開催)
(1)研修を通して現場のマネジメントについて、①人に関する課題をどのようなプロセスで解決していくか、②チームビルディングによる事業運営を現場の課題とすり合わせながら体験し、職員一人ひとりの能力をいかに引き出すか、について学んだ。具体的には、問題の背景や経緯を「人」ではなく「出来事」に焦点を置いて把握し、問題解決までの考え方や手法を学び合う場とした。
(2)法人の方針・理念を共有し、組織の考えや方向性を学ぶことで、事業所運営を担う職員としての意識向上に取り組んだ。
(3)社会人としての人づくり研修を行い、守るべき言葉や行動の決まり事など社会志向やマナーを学んだ(ビジネスマナー研修)。
2.障がい者雇用に伴う人材育成(ジョブコーチ制度で対応)
・個人の特性を理解し、業務習得のためジョブコーチと連携を図り、大切な働き手として活躍できる人材の育成に取り組んだ。
・事業所の雰囲気や業務への適性などマッチングが難しい面はあるが、地元養護学校と密に連携を図り、生徒自身の実習体験を重ねることで人材の確保に繋がっている。(細かな業務内容を何度も繰り返す。毎日の表情やしぐさを観察する。複雑な工程は見直すことで対応した。)
・正規職員への登用制度に挑戦が可能な状況にある。
・新卒者(養護学校)採用実績…令和5年度1名、令和6年度1名。
3.ビジネスチャット「chatwork」を活用した生産性向上の取り組み
・これまで、職員同士の情報伝達と共有の方法は口頭やメモなどであった。聞き間違いや時間が掛かるなど、一部に支障が生じていた。有効な手段を検討するなかでchatworkを導入した。
・インカムで補うことのできない情報の領域が広がり、業務に係る重要な情報の把握と利用者への対応が可能となった。活用内容は、①介護職員と医師、看護師の情報共有が迅速に行われ、記録としても残る。②緊急でない情報は、記録を基に丁寧に確認し合うことが出来る。③職種別のグループ化により、利用者対応に関わる情報やその他の情報など、必要な人が必要なものを確認できるようになった。④会議内容及び連絡事項について、事前に発信することが可能となった。
・高齢の職員やスマホを持たない職員は共有のパソコンで情報発信と確認を行うため、タイムリーに参加できない課題がある。現在、業務用スマホの確保、操作習得の訓練実施等を検討中。
4.定年者のランクアップ登用制度の見直し
・これまで定年者(60歳)に対する登用制度は、事務局長による経営上の判断で決定されていた。働く意識の低下による業務効率の低下を招いていた。そこで、すべての職員の働く意欲を高め、生活環境の向上に貢献し、働きがいのある職場づくりを目指す考えのもと、職員の意思により正規職員として処遇される制度に見直した(所属長推薦と筆記・面接試験を実施)。併せて、ランクアップ登用制度の対象を非正規雇用者にも広げた。
5.所定外労働時間の削減、休暇取得で働きやすい職場環境づくりの取り組み
(1)所定外労働時間削減の取り組み
①介護補助スタッフとして、シーツ交換及び食事の準備等を専門職以外の職員(パート職員)が担当することとした。
②「勤怠管理システム」、③「勤務シフト作成ソフト(独自のカスタマイズ機能付き)」を導入し、データでの申請と管理を可能にし、勤怠処理業務に係る業務時間の削減を行なった。
(2)休暇が取得しやすい職場環境づくりの取り組み
①有給取得率目標を設定した…年度末までに取得率70%以上を目指す
②勤怠管理システム(kingoftime)の導入…個人スマホにより休暇と時間外勤務の申請が可能になった。データ管理により正確な労働時間と勤怠管理を把握できている。
③有給休暇取得制度充実の取り組み
・新規採用時の有給付与日数は10日とする。(令和4年度に改定)
・新型コロナ、インフルエンザ等の感染症に係る特別有給休暇(全職員)
・本人以外の同居家族の罹患、子どもの保育園や小学校の閉鎖等に対して5日を付与
・毎月の衛生委員会で有給休暇取得状況について確認し、取得率の低い職員に取得を促す。
3.取組の効果(改善点)
1.(1)、(2)職員アンケート結果:経営理念やビジョンを理解し「共感している」「大体している」…93.3%、法人の経営方針や目指す方向性は時代に「合っている」「概ね合っている」…94.2%
(3)利用者から職員の「言葉遣いが変わった」「身だしなみが変った」と評価する声がある。
2.これまでの採用者3名は在職中。
3.①②③精度が高まり、利用者ケア及び生産性の向上に繋がった。人間関係も良好になった。
④会議時間は1/2に減少(月5回開催:一人あたり100分の削減×参加人数)。所定外時間での開催は無し。
4.制度利用職員(令和3年度:4名、令和4年度:2名、令和5年度:1名)
・職員アンケート結果:「何歳まで働きたいか」の問いに60歳~70歳は2.5%、その他23.1%の職員が可能な限り長くと回答。離職率…令和3年度12.7%、令和4年度10.6%、令和5年度9.9%と徐々に減少。
5.(1)①月一人あたり所定外労働時間:令和3年度0.39h、令和4年度0.41h、令和5年度1.4h
②③事務時間約3時間/月削減
③作成者の精神的負担が無くなった
(2)令和4年度55.7%、令和5年度60.0%。職員アンケート結果:希望日程や日数で休暇がとれている…76.7%。職員の転職意向について、「今のところするつもりはない」令和4年度51.5%から令和6年度には71.2%に増加。