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事例No.0659
1.取組の背景
生産性向上に向けた取り組みが必要だった。マクロ的には、金融政策金利の上昇・為替変動に伴う円安・物価高騰、最低賃金の上昇、エネルギー価格の上昇、医療保険、介護保険等の社会保障費の上昇、人口減少・少子高齢化による働き手不足、イノベーション・技術革新に伴う新たな投資の必要性など様々な課題があった。
社会福祉法人としては、介護サービス需給バランスの変化、収益減や赤字経営、人材確保と労働環境の整備、人件費と経費負担増・資金難によるICT機器導入の見送り等、問題が山積していた。
2.取組の内容
利用者様にもケアをする職員にもメリットのある介護のICT化に取り組んだ。
身体面の負担軽減として、離床アシストロボット「リショーネPlas」6台を導入した。「リショーネplas」は、ベッドが縦半分に分離し、一方がそのまま車椅子になるとういうもの。ベッドから車椅子へ、車椅子からベッドへの移乗介助が不要になる。そのため、利用者様のからだへの負担が少なくなるとともに、職員の腰痛などのリスクの軽減や、「利用者様に怪我をさせてしまうのでは」という心理的な負担も減らすことができる。寝たきりになりがちな介護度の高い利用者様の離床を促し、生活の質向上にもつながっている。
併せて「眠りSCAN」20台を導入した。マットレスの下にシート状のセンサーを敷くだけで、利用者様の睡眠・覚醒・起き上がり・離床などの状態や寝ている時の心拍数・呼吸数をモニターで確認できるシステムである。計測データは専用のアプリでリアルタイムでチェックでき、利用者様の状態に合わせたケア・見守りに利用できる。これまでのように、利用者様の状態を確かめるために部屋を頻繁に訪問する必要がなくなり、職員の精神的・身体的負担も軽減されている。いずれも高価な装置であり一気に導入することは難しいため、少しずつ増やしている。(H29~R6 導入金額総額15,000千円、うち補助金等5,000千円)
複雑な操作性やパソコンの使用などに不慣れな職員がいますが、導入にあたっては、時間をかけて理解度向上のための周知を丁寧に行っている。
当法人の職員は総勢271名である。介護福祉士、介護支援専門員、管理栄養士、理学療法士など様々な資格保持者がいる。近年は毎年5名前後の新規採用をしているため、若手も増え、幅広い年齢層の職員が働いている。職員の満足度がサービスの質の向上につながり、利用者様の笑顔に繋がるものと考え、制度整備にも力を入れている。バラバラだったキャリアパス体系を再整備するとともに、給与制度の明確化も図っている(諸規程と業務特性・能力・給与・昇格要件等を統一)。
制度の整備だけでは不十分であり、それらを形骸化させないための周知徹底と、職員同士で協力し合って育児休暇や看護休暇などを利用しやすい雰囲気づくりにも注力している。実際、男性職員が育児休暇を取得した実績が「くるみん認定企業」に繋がった。また、年に1回、就労意向調査を行い、職員の家庭環境など諸事情を考慮した人員配置を行っている。さらに、正社員待遇のままで、勤務地や職種、勤務時間などを限定する働き方である「限定職員制度」も導入している。このように新たな制度を導入し、職員の価値観の多様化などに応じてきめ細やかな対応をしている。
介護現場における人材育成は、利用者様へのより良いサービス提供のためであるとともに、職員のスキルアップやモチベーション向上のためでもある。
当法人では、新人研修から階層別研修まで、教育・研修制度も充実している。新人研修にはプリセプター制度も導入している。プリセプティはプリセプターから1年間、マンツーマンで指導を受けながら仕事を覚えていくことができるので安心である。
制度だけを整備して現場任せにするのではなく、指導計画書のチェックや面接の実施など、組織全体でしっかりとバックアップしている。2年目以降は、初級、中級、上級、さらに管理職と就業年数に応じた研修が用意されている。また、資格を有していない職員の場合は、資格取得のための奨学金貸与制度の利用も可能である。
こうした職員一人一人の成長を後押しする仕組みは、職員の高い定着率に繋がっており、人材は豊富で基準よりも多い人員配置が実現できている。つまり、職員への手厚さがそのまま利用者様への手厚いケアに直結している。
3.取組の効果(改善点)
・離職率は全国平均を大幅に下回っている。令和4年度の全国平均14.4%に対し、6.3%の実績となっている。定着率も93.7%と高水準を維持している。
・新卒採用も継続的に出来ている。令和元年:7名、令和2年:4名、令和3年:5名、令和4年:6名、令和5年:3名、令和6年度:7名
えるぼし認定基準に係る取り組みの効果
・採用
正社員に占める女性労働者の割合69.5%(産業平均値:医療・福祉66.4%)
基幹的な雇用管理区分における正社員に占める女性労働者の割合【総合職】67.3%(産業平均値:医療・福祉59.0%)
・継続就業(全ての雇用管理区分で0.7%以上であること)
総合・限定 女性11.01年÷男性11.08年=0.99年
一般 女性2.80年÷1.40年=2年
・労働時間(平均残業時間:全ての雇用管理区分で各月ごとに45時間未満)
一月あたりの労働者の平均残業時間
総合・限定:4.81時間、一般:3.10時間、臨時:2.95時間、嘱託:0時間、パート:0.4時間
・管理職比率(管理職に占める女性労働者の割合)58%(産業平均値:医療・福祉42.9%)
・多様なキャリアコース
女性の非正規社員から正社員への転換:2名