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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人 北海道・東北

事例No.0658

1.取組の背景

 県は深刻な人口減少と少子高齢化に直面し、特に労働力不足が顕著である。高齢者の増加に伴い介護需要が増加する一方で、労働力の供給が追いつかない状況である。この現象は地域全体に深刻な影響を与えており、特に介護職の需要が増大している。介護現場では深刻な人手不足や、身体的・精神的な負担が大きな課題となっている。離職率も高く、テクノロジーの導入や海外からの人材の受け入れが進められているが、言語や文化の壁、スキル習得の問題もある。

 当事業所は県内でも有数の過疎地域にあり、人材不足が著しいこと、また、それに伴い従業員に大きな負荷がかかっていたことから、これらの解決に向けて新しい手法で取り組まなければならないと考えていた。

2.取組の内容

 

海外からの人材受け入れ

 現在、外国人労働者(インドネシア人16名)が日本の介護現場でスムーズに働けるよう、日本語教育を徹底している。オンラインでの学習コンテンツや、現場でのコミュニケーションが円滑になるようICTツール(翻訳機能など)を活用して支援している。言語の壁を乗り越え、業務がスムーズに進められるよう工夫している。

 加えて、日本の文化や生活習慣についての教育も行われている。たとえば、高齢者に対する敬意の払い方や、食事、入浴に関する習慣を学ぶことで、介護現場における文化的な違いによる摩擦を最小限に抑えるようにしている。外国人労働者が日本の介護文化に適応しやすくなるようサポートしている。
 さらに、外国人労働者向けに充実した介護技術の研修も行っている。身体介助や認知症ケアといった専門的なスキルを学ぶ機会を提供し、現場でのトレーニングも通じて実践的なスキルを身につけられるようになっている。高齢者を安全にサポートする技術がしっかりと身につく体制が整っている。また、自社内で日本人講師を育成して社内で実務者研修ができるようにし、キャリアアップにも繋げている。
 また、インターンシップ制度を導入し、外国人大学生が来日前に介護現場、職場、地域、日本文化を体験できるプログラムも実施している。このプログラムでは、介護技術の習得だけでなく、日本の生活や文化にも触れる機会が提供されている。現場での仕事に慣れることで、就労後のミスマッチを減らすことができ、新規採用にも繋がっている。
 これらの取り組みにより、外国人介護人材が日本の介護現場で活躍できる環境を整えている。

 

介護現場へのテクノロジーの活用

 具体的には、次のようなテクノロジーを活用している。
 AIやIoTデバイスを用いた見守りシステムを導入し、利用者の健康状態をリアルタイムで監視できるようになっている。異常が発生した際には即座に介護職員に通知され、迅速な対応が可能となっている。特に夜間の見守り業務で有効で、介護職員の負担を大幅に軽減しつつ、利用者の安全を確保できている。
 また、クラウドベースのデータ管理システムにより、利用者の健康データやケア記録を一元管理することができるようになった。介護職員や医療機関、家族との情報共有がスムーズに行えている。勤怠、労務管理、給与計算も一元管理できるようになり、事務負担の軽減にも繋がっている。
 LINE WORKSやBONX WORKといったコミュニケーションツールも活用し、スタッフ間の連絡や情報共有が円滑に行える環境を整備した。リアルタイムでの情報伝達が可能となり、チーム全体での業務連携が強化された。翻訳機能を持つICTツールも導入し、外国人介護職とのコミュニケーションが容易になり、多文化の介護チームが効果的に連携できるようになった。
 さらに、テレワークやリモートワークの導入も進められており、バックオフィス業務や研修などをオンラインで行うことで、スタッフが柔軟に働ける環境を整備した。資格取得にも繋がっている。また、テクノロジー活用の経験を言語化し、ホームページやSNS、電子書籍で情報発信している。

 

多様な働き方の導入

 具体的には、次のような取り組みを行なった。
 ・社内副業(社内パラレルキャリア)と社外副業(県のチャレンジワーク)を認め、社員が本業と並行して他の業務に従事できる環境を整えた。スキルアップや新しい経験を積む機会を得ることができるようになった。
 ・場所にとらわれない働き方を実現するために、リモートワークを導入し、自宅や他の場所から業務を遂行できるようにした。通勤時間の削減やワークライフバランスの向上に資する取り組みである。
 ・社員が従来の週5日勤務の他に、週4日勤務を選択できる制度を設けている。家庭の事情や個人のライフスタイルに合わせた働き方が可能となり、労働意欲の向上とともに、長期的な働きやすさを実現している。
 ・業務間に一定の休息時間を設ける勤務時間インターバル制度を導入し、労働者の健康と効率性を重視した働き方を推奨している。過労やストレスの軽減、心身の健康を守りながら生産性の向上が図られている。
 ・「リフレッシュ休暇」制度を導入し、社員が仕事から離れて十分な休息を取ることで、リフレッシュし、再び高いパフォーマンスで業務に臨むことができるよう支援している。

3.取組の効果(改善点)

労働力不足の解消

 副業制度やリモートワークを導入することで、多様な人材の確保が可能となり、特に地域で顕著な労働力不足に対応することができた。
 ※高齢者雇用4名、障がい者雇用3名、海外人材雇用16名(2024年8月末現在)

生産性の向上

 ICTツールやテクノロジーの活用により業務効率が向上し、スタッフの業務負担が軽減できた。また、業務棚卸によって業務内容の可視化・共有が進み、作業効率が向上した。
 ※月平均20時間の残業(2021年度)であったものが、5時間未満に減少(2023年度実績)

従業員の働きやすさの向上

 週休4日制やリフレッシュ休暇、勤務時間インターバルの導入により、ワークライフバランスが向上し、従業員の満足度やモチベーションが高まった。
 ※定着率 96.4%(2021年度実績)から、従業員定員の増加に転じ、103.8%(2022年度実績)103.5%(2023年度実績)となった。外国人雇用等の成果もあり採用率も増加となった。

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