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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人・社協 中国・四国

事例No.0651

1.取組の背景

 法人として利用者の生活の援助、社会的孤立感の解消、心身機能の維持向上と共に、ご家族の身体的、精神的な負担の軽減を図ることを目指している。これらの運営を担う職員がやりがいを持ち健康で長く働き続けるための方策として、介護ロボット導入、ICT化推進、介護助手活用等、労働環境の改善を行うことで、職員の定着率を向上することが重要となった。

2.取組の内容

【働きがい】

 組織管理・業務管理 …介護ロボット導入・ICT化による業務管理・改善の取り組み

(1)介護ロボット導入の経緯と実績

  平成28年介護職員の腰痛問題を抱えるなか、介護現場における職員の健康管理と労働環境改善のために介護ロボット導入を決
  定し、身体的、精神的負荷の軽減に取り組む。HAL(腰タイプ介護使用)、眠りSCAN、Hug、インカム等の導入実績がある。

(2)ICT化の推進

 ・施設内のWi-Fi環境を整備し、遠隔地からの操作が可能なタブレット端末やモバイル印刷機、LTE対応パソコン、見守り機器等
  を導入し、いつでもどこにいてもリアルタイムに利用者の情報共有を行い、業務の省力化、効率化を図った。
 ・その他、自社開発として、タブレットを使用した記録作成・管理システム及び全員が携帯するスマートフォンと眠りSCANと
  の連携システム、面会予約システムや誤配膳・誤薬防止システム等・利用者サービス向上のために独自の視点でICT化に取り
  組む。一例として、誤配膳・誤薬防止システムは、業務の慌ただしさや複雑さに対する職員の混乱や焦り、疲労等の人的リス
  ク軽減を目的に、運送業界の配送ミス防止アプリにヒントを得て設計・導入した。

(3)介護補助スタッフの配置

 ・専門職との役割をよりわかりやすいものとし、利用者サービスの向上と、業務の効率化を進めた。

 人材育成制度

(1)公的資格取得支援制度により、受講費用等の全額支援をはじめ、積極的な外部研修の受講(業務として)を推進し、仕事をし
   ながら勉強する機会を確保している。
(2)プリセプター制度を基本とし、また、介護プロフェッショナルキャリア段位制度のアセッサーが定期に、職員全員の実技評価
   を行い利用者サービスの質の維持・向上に取り組んでいる。
(3)職員に業務権限を与えることで、「自ら考え行動する!」ことを推奨する組織風土づくりに取り組んでいる。
(4)職員から、業務改善に関する意見を上司に日常的に提案できる〝ボトムアップ〟の風土がある。
(5)定期的に面談の機会を設け、本人の希望を確認しながらキャリアアップできるよう支援している。
(6)毎年、ケアの好事例や利用者、家族からの謝意等の情報を共有する機会を設け、職場内で「いいね!大賞」を募集し、職員の
   評価や利用者、家族からの評価の高い職員を表彰している。

 

【働きやすさ】

  「次世代育成支援対策推進法(令和3年度~令和6年度の取り組み)」及び「女性活躍推進法(令和4年度~令和7年度の取り組み)」に基づき、仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない職員を含めた多様な労働条件整備のための「一般事業主行動計画」を基に取り組みを推進している。

 労働条件(労働時間・休日)

 (1)職員の有給休暇取得率を令和2年実績(54.3%)より各年1.5%アップとし、全体で令和7年3月末の取得率を60%以上とする
          目標を掲げ、労働環境の改善に取り組んでいる。
  (2)有給休暇取得推進のため就業管理システムを導入し、管理職による取得状況の把握、取得が進んでいない職員に対しての取
             得勧奨を行っている。

 労働環境(安全管理、精神衛生)

(1)安全管理
  腰痛問題をきっかけに職員の健康管理と業務環境改善のため床走行リフト、介護ロボットHAL、介護ロボットHugなど介護機
  器を積極的に導入し、業務負荷軽減に取り組んでいる。
(2)精神衛生
  メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置…相談は随時受け1ヵ月に1度産業カウンセラーによる相談日を設け、希望する
     職員に対しカウンセリングを行っている。

 

 仕事と家庭の両立支援制度

(1)育児休業期間中の代替要員の確保や業務内容、業務体制の見直しを実施。
(2)男性の育児休業取得を促進するための措置を段階的に実施。
  ・育児休業制度に関するパンフレットを配布し周知。
  ・出生時に育児休業の働きかけ。
  ・男性版産休制度の規定改正を実施。

 

3.取組の効果(改善点)

【働きがい】

 組織管理・業務管理

(1)介護ロボット

  ・HAL(腰タイプ介護使用)…性能や安全性は高く腰の負担軽減は認められたが、個別・随時対応のケア向きでないため効率
   運用できないと判断し、使用期間満了にて使用中止。
         ・眠りSCAN…全室整備。個人別設定の活用により、支援タイミングを調整可能。特に夜勤者にとってこれまでの巡回が1時間
             毎であったが大幅削減につながった。・Hug…中度者に活用。リハビリ効果もある傾向を確認できた。
         ・インカム…介護間及 び介護~看護間の連携に効果が大きい。

(2)ICT化…自社で独自のシステム開発に取り組む

  ・面会予約システム…利用者家族からの面会日時の予約をオンライン化(これまでは電話による予約受付が業務を圧迫→負担
   の軽減と他業務へ時間を有効活用)→50~70件/月の予約対応を半数に軽減し、150分/月圧縮。また、同時処理要素の削減
             により対応者のストレスを軽減。
  ・誤配膳・誤薬防止システム…利用者ごとのICタグ管理を、新人職員、新規利用者の事故防止対策として導入したが、現場の
   評価として「時間が掛かる」、「もっと簡単な方法にして欲しい」等の意見を受け、アプリのシンプル化等により、使いや
             すい仕組みの改善を検討中。

(介護ロボット・ICT化の評価)
  ※職員アンケートからの効果検証(令和5年度実施)
 〇使用満足度…1位:眠りSCAN、2位:Hug、3位:PC
 〇評価理由ランキング…1位: 身体的負担が軽減できる。
            2位: 精神的負担が軽減できる。 
            3位: 作業効率が向上し、余裕時間が生まれる。
            4位: 他職種との連携がしやすくなる。 
            5位: 作業が簡単にできる。
  ICT機器に関しては、職員が現場で使用するなかで感じた意見を吸い上げ、より使いやすく効率的に運用するための検討委員会
  を設置している。また、日常的に職員から挙がる〝これあったらいいね〟の声を基に自社でシステム開発に取り組む。
  ※インカムは、職員の要望で導入した。

 人材育成制度

(1)介護福祉士実務者研修受講料助成実績…令和3年 7名
  社会福祉士通信課程入学金等助成実績…令和4年 1名
  外部研修・講習会参加実績(eラーニング、オンライン研修含む)
  令和4年度 150名※コロナクラスター発生のため自粛も生じた
  令和3年度 204名
(2)アセッサーの実技評価は、職員の配置転換後を含め全職員対象に実施。資格取得者であっても業務のレベルを下げない取り組
   みが行われ、サービスの質の確保につながっている。
(3)嘱託医師と連携しながら利用者の薬の効果検証を重ね、最適な投薬につながる成果を生んだ。職員(看護師)の自主性を尊重
  しながら、組織としてやる気を引き出す業務運営が成果につながった。
(4)自社開発のICT化及び使用機器の改善等の意見・要望を発信することで、職員自ら職場環境改善に参画。
  ・その他、管理職における男女の割合…女性66.7%、男性33.3%

【働きやすさ】

 労働条件(労働時間・休日)

 ・職員有給休暇取得状況…年平均取得日数:13.9日、令和4年度時点で平均取得率:62.8%は目標を達成。
 ・一ヶ月当たりの平均所定外労働時間…2.8時間

 労働環境(安全管理、精神衛生)

(1)安全管理
 ・労災発生状況…令和4年度 3名 令和3年度 無し
(2)精神衛生(メンタル不調)…令和4年度 2名(復職2名)令和3年度 2名(復職1名、退職1名)

 仕事と家庭の両立支援制度

 ・職員又は配偶者の出産と育児休業の取得状況…6名(令和2年~令和4年)内、男性1名取得。

 勤続年数・定着率

 ・職員の平均勤続年数…10年4ヶ月
 ・離職率(組織全体)…令和4年度 5.6% (令和3年度8.3%)
  離職が少なく、在職年数が長い職員が多く、利用者の家族より「職員の顔が変わっていないので安心感がある」と評価を受け
  ている。

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