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事例No.0650
1.取組の背景
離職者が多い時期があり、正職員の平均勤続年数が5年に満たない状況に対し、どうすれば平均勤続年数を延ばし定着率を高く出来るかを考えた。職員の定着のための「働きやすい、働きがいのある職場づくり」に向けて、いままでの昇給制度の大きな見直しや、法人がどのような人材を求めているかを職員に理解してもらうためのキャリアアップ要件の可視化など、将来へ希望が持てる制度を提案した。
2.取組の内容
【働きがい】
⑴ 賃金・ポスト
離職者が多い時期があり、正職員の平均勤続年数が5年に満たない状況に対し、どうすれば平均勤続年数を延ばし定着率を高く出来るかを考えた。いままでの昇給制度を大きく見直し、将来希望が持てる制度として提案し、承諾を得るため全職員に丁寧に説明して納得いただくことで、制度の変更を実現した。昇給制度を二階建てで考えてもらうことにした。一つはキャリアアップ手当としてランクを上げることで昇給を実施し、もう一つは毎年の通常の昇給は行わず、6年後に5年分の昇給額をさらに増額した昇給を実施するシステムとした。
(2) 組織管理・業務管理
介護の仕事で生活援助に該当する業務を分業し、アシスタント職(ケアアシスタント・ライフアシスタント)を導入した。無資格者でも安心して介護業界に飛び込むことが出来るようになるし、60代の元気な高齢者の方に働いてもらえるのではと考えた。また、介護職も主に生活援助の仕事を手伝ってもらうことで、利用者と関われる時間が増え、介護の質を上げることが出来ると考えた。障害者雇用についても可能性を追求し活躍の場を設けた。
(3) 評価・処遇制度
年に一度、介護職員のみキャリア段位評価を行っている。ランクを5段階とし(ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、マイスター)段位に合った習得項目があり、各々の段位にある項目を全てクリアすることで上位段位に上がることができる。年度末に行う評価者面接において自分が評価してもらいたい項目や、今後のビジョンを自己申告用紙に記載して面談を行う。それらの情報を踏まえて評価者会議にて個人の段位を決定し、段位と経験年数(賃金表)が重なった部分の金額を支給することにしている。
(4) 人材育成制度
新人職員にはプリセプター制度(マンツーマンで指導・支援する)を導入している。プリセプター制度は、新人介護士のリアリティショックを緩和し、実践能力の獲得を支援する教育体制として導入した。また、新人が戸惑ったり、悩んだりした場合、相談しやすい関係を平時から作っておくことを目的としている。法人内に新人教育プロジェクトチームを発足し、マニュアル作成に始まり、評価制度などを構築し、新人教育の一翼を担っている。新人教育プロジェクトチームメンバーや指導者及び新人が集まってのランチミーティングや、BBQを開催している。
【働きやすさ】
(1) 労働環境(安全衛生・精神衛生)
長期にわたる病気治療が必要となった職員に話を聞き、令和3年度から病気休暇制度を取り入れた。長期的かつ定期的な通院が必要で、有給休暇のみでは時間が不足する場合、各年度において5日の治療休暇を取得することを可能とした。休暇は1日、半日単位、1時間単位で取得可能としている。
3.取組の効果(改善点)
【働きがい】
(1) 賃金・ポスト
取り組みを始めて6年目になる。職員の理解のもとに昇給制度を改革した結果、この5年間で離職する職員は極端に少なくなり、平均勤続年数は8年10ヵ月まで上昇した。6年目の今年の昇給日が近づくにつれ職員間でも話題にもなり、大きな昇給に満足している。キャリアアップ手当については、目標を明確に解り易く示しているため、努力次第で獲得できることがモチベーションアップにつながり、多くの職員がレベルアップを目指して取り組んでいる。
(2) 組織管理・業務管理
生活援助業務の一部を担当するアシスタント職を導入したことで、介護職としては難しくても、この業界の仕事に就く人が増え、新規の人員獲得に繋がった。また、業務を分担することが出来るようになったため、介護職に時間的余裕が生まれ、利用者に携わる時間が増え介護の質が向上している。介護職の残業時間も減り、働きやすい環境となっている。アシスタント職には障害者の方も多く採用している。障害者雇用促進法に示されている2023年法定雇用率2.3%に対し、すでに6.28%と3倍近くの方が活躍している。
(3) 評価・処遇制度
キャリアが上がるための要件が可視化されているため、職員が理解しやすく、法人がどのような人材を求めているかを把握することができる。職員も自分の目標を設定しやすく目指すべき姿を想像しやすいと好評である。
(4) 人材育成制度
プリセプター制度を導入することで、新人が気軽に相談できる環境が構築でき、離職率低下に繋がっている。また、マンツーマンで指導を受けることで、人による指導の違いが無くなり新人が混乱しない。指導者役の職員も指導することで、自分自身の成長に繋がり相乗効果が得られている。
ランチミーティングにおいては忌憚のない意見交換が出来ており、またBBQを開催することでは業務とは違う開放的な場の空気により、いつもより気軽にコミュニケーションを取れている。
【働きやすさ】
(1) 労働環境(安全衛生・精神衛生)
制度創設以来、まだ取得した職員はいないが、創設前には該当する職員が2名いたことから制度設計のヒントと、今後の必要性を強く感じ制度を創った。該当者が出た場合、有給休暇だけでは治療しながら就労することは難しいと思うため効果は高いと考える。