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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人 北陸甲信越・東海

事例No.0647

1.取組の背景

 職員の腰痛予防に着目、利用者の安全確保と職員の負担軽減を実現するため、リフトや介護ロボット導入を図る。ICTを活用して業務効率化を実現することで捻出した財源を、テクノロジーの更なる導入に充てる環境にする。また、人材育成や処遇の見直し、多様な働き方を可能にするために準職員を正規職員へ、女性管理職の登用、育児休暇後の100%復帰などの取組みを推進する。

2.取組の内容

賃金・ポスト

  ⑴ 給与水準を上げる取組

         ・介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算に基づく給料アップの実施。
  ・定期昇給の実施、夜勤手当の増額。
  ・準職員から正職員への転換登用の推進。 

  (2) 女性管理職への取組

        ・社内女性ロールモデルと女性職員をマッチング、悩みや心配事について相談、助言、メンターとして継続的な個別支援を
              実施。
        ・働きながら子育てを行う女性社員が、キャリア形成を進めるために必要な業務体制、働き方の見直しを実施。

評価・処遇制度

  (1) 人事制度・処遇の見直し

  ・H18年度― 能力主義の人事制度導入
  ・H31年度― 定年年齢および雇用継続年齢の引き上げ  定年60歳→65歳、継続雇用65歳→70歳に
         ― 特定正職員(夜勤免除)制度の導入
         ― 有給休暇のうち24時間は時間単位での取得を可能にした。

人材育成制度

 (1) 研修制度の拡充、資格取得支援の充実

         ・職員教育研修規程を設置し、研修受講者を広く募るために公募制とした。   
  ・意欲あるパート職員の正職員登用を行った。

 (2) 採用育成定着委員会の設置

  ・採用した職員について、「全職員で育成」という育成方針を統一。
  ・福祉教育機関(介護福祉士養成校など)と連携し、実習生受入、教育機関の要請による調査協力、施設見学、個別相談会等
             を積極的に実施。

組織管理・業務管理

 (1)職員満足度調査の実施

      ・令和3年に職員階層別カフェを開催、アンケートで意見を吸い上げて可能な限り要望に応える形とした。「役職者手当ア
          ップ」「管理監督職の資質向上研修」などを実施した。

人間関係管理

      ・管理監督職研修を年4回実施し心理的安全性を学んだ。管理監督職8名が研修内容を活かして「ボトムアップ」を受入れト
          ップダウンの姿勢を改め、目標設定して実際の運用につなげた。 
      ・職員からの改善提案制度(意見取込)を採用し定着化させた。提案書には原則、即日回答する。

福利厚生

      ・出産、子育て、ハラスメント等に関する相談窓口の設置。

労働条件(労働時間・休日)

 (1) 働きやすい環境整備の取組みとして

         ・年間休日120日。
  ・有給休暇取得を推奨。
  ・リフレッシュ休暇として連続5日間以上の有給休暇を付与。
  ・時間単位の有給休暇取得を可能にした。
  ・育児休暇取得の推奨。

労働環境(安全管理・精神衛生)

 (1) 給食相互協力協定締結(令和2年5月)

        ・介護施設の調理職員などが新型コロナウイルスに感染した場合に備え、3つの法人と給食の提供をカバーしあう協定を結ん
            だ。

 (2) 新型コロナウイルスに対応するための職場環境の改善・整備

         ・特別養護老人ホームと短期入所介護施設が同一空間であった。感染拡大防止を目的として、居住空間を改修し、キッチンを
             備えた共同生活室を設置。4人または2人の多床室の居室もすべて個室に改修。
  ・情報共有ソフトの導入による接触の最小化の実現。
  ・全館Wi-Fiおよびインカム、リモート会議環境を整備。
  ・利用者、家族、地域、他事業所等への迅速な感染状況の発信。
  ・積極的なマスコミ対応で風評被害から職員を守る。

 (3) 介護ロボット・ICT機器の導入・活用により、さらなる業務効率化や負担軽減など現場革新を実現

         ・眠りスキャンを全館全床に整備(令和元年11月)。
  ・移乗用ロボット(Hug、スカイリフト)の導入を拡大し、各部署に配置。
  ・PC、スマートフォン等デバイスの拡充。
  ・情報共有ソフトの導入により作業効率の向上。
  ・AI記録入力、音声入力ソフトの導入。
  ・非接触型骨伝導インカムの導入(令和2年2月)。

 (4) ICT機器等の導入に合わせて、職員意識改革の推進

         ・令和2年度事業計画にて3M(ムリ・ムラ・ムダ)削減を定め、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)推進活動を1年間実
   施。
  ・令和3年度にICT推進委員会を設立し、委員会において、ICT機器の導入・検討から選定、使い方指導、修理受付、処理まで
   を一括して行う。

 (5) 災害時の備えの拡充

         ・災害時における非常用発電設備を設置。
  ・入居者の最低限の生活環境保持並び災害情報収集、連絡手段のための電源を確保。
  ・福祉避難所としての登録(DWAT登録済)、令和元年に太陽光発電設備、蓄電池、令和3年に非常用災害バッグ、非常用発電
   機を設置。

 (6) 補助金等の活用

        ・令和元年度~3年度の設備費用3,100万のうち補助金を1,750万円活用。
      (県の介護ロボット・ICT導入補助金、厚生労働省の人材確保等支援助成金、経済産業省のIT導入補助金、全国老人福祉施設協
             議会の介護ロボット導入実証事業補助金等)
  ・令和4年度は332万円のうち224万円を活用。

 (7) 取組みの情報発信

         ・令和4年度介護ロボット・ICT導入先進事業所見学会(県主催)の開催や個々の視察受け入れなどにより、取組の横展開を
             積極的に実施しているほか、今後も県内外からの視察受け入れおよび出張研修会などの企画を実施予定。

仕事と家庭の両立支援制度

 (1) 出産、子育て、ハラスメント等に関する相談窓口の設置

        ・女性職員が就業を継続しやすい環境を整備

 (2) 女性管理職への取組み

        ・社内女性ロールモデルとして女性職員をマッチング、悩みや心配事について相談・助言、メンターとして継続的個別支援を実
             施。働きながら子育てを行う女性社員がキャリア形成を進めるために必要な業務体制、働き方の見直しを行った。

 

3.取組の効果(改善点)

賃金・ポスト

         ・職員の処遇改善、定期昇給の実施、夜勤手当の増額により職員の満足度アップに繋がった。
  ・準職員から正職員への転換登用(平成29年度2名、令和元年度4名)
  ・女性管理職割合63.4%を実現した。その結果、令和4年度県の女性活躍企業に認定された。

評価・処遇制度

         ・導入前は意欲のある職員と意欲のない職員が同評価となることが平等ではないという意見もあったが、能力主義の人事制度
   への変更により職員のやる気を引き出す事ができた。
  ・時間単位での有給休暇、特定正社員(夜勤免除)、定年引上げは職員の提案をもとに導入した制度であり、職員の満足度向
   上・離職防止に繋がった。
   定年延長者の実績としては、60歳到達者で4名、65歳到達者で3名。令和3年度以降の新卒採用者の離職率は0人(0%)とな
   っている。(新卒採用者数は、令和3年度8名、令和4年度7名、令和5年度3名)

人材育成制度

  ・平成30年、同一労働同一賃金の方針に従って、意欲ある準職員に対して積極的に正職員への登用を促し9名の登用を実現
   した。
  ・同じ立場の役職者から法人への意見を具申し、提案をボトムアップするとともに、法人行動規範を策定した。

人間関係管理

  ・令和3年度に副主任会、主任会、課長会の開催をスタートさせて階層毎に情報の共有化を図ることが出来た。
  ・提案制度の導入により、業務の改善、サービス向上、コスト削減等に寄与した。
  ・職員からの提案により採用した項目:「特定職員制度(夜勤免除)」「有給時間給取得制度」「ユニフォーム廃止」「研修報告
   会開催」「採用育成定着化委員会設立」等を実施した。

福利厚生

  ・出産、子育て、ハラスメント等に関する相談窓口の設置により、女性職員が働きやすい職場環境を構築することが出来、離
   職防止につながった。

労働条件(労働時間・休日)

  ・育児休暇の取得推奨により、女性職員の取得率は100%。殆どの女性職員が小学校就学前まで時短勤務で就労。

労働環境(安全管理・精神衛生)

  ・今後起こりうる水害や地震などの災害時や、ノロウイルスの発生時などにも他施設から協力を受けられる体制ができた。
  ・ICTの積極的な活用により、ゾーン内外の職員をZoomでつなぐことが可能となり、必要な情報を漏れなく伝達し、衛生物品
   の調達等を迅速に行うことが出来るようになった。
  ・入居者との面会は県の方針に従いWEB面会(オンライン通話用タブレットの導入)とすることに加えて、入居者の状況をご
   家族にリアルタイムで伝えるために「安心お便りメール」を早期に実施したことにより信頼を得ることができた。また、感
   染防止対策を徹底した上で直接面会を適時優先させるなど柔軟に対応し、入居者のQOL向上に繋がった。
  ・NAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入し情報編集・確認等をPC上で処理することにより可能な限り人的接触をなく
   し、業務の効率化および感染防止に寄与した。
  ・平成25年に「腰痛予防対策モデル施設」の指定を受け、平成29年には県第1号となる「腰痛予防対策推進福祉施設」に指定
   され、当該施設の職員が腰痛予防対策介護研修の指導アシスタントを務めることになった。
  ・先進的な取組み事例として、年間100名以上の見学希望者(令和5年度上期は25事業所131名)があるとともに、マスコミ取
   材等も積極的に受入れ、法人として広くブランドPRも行えている。
  ・県ものづくり企業、大学、関係団体、自治体等がメンバーとして参画する「ヘルスケアコンソーシアム」に介護事業所とし
   ての立場から参画し、介護現場の生産性向上を実現するための介護ロボットの開発に現場の声を伝えるとともに、事業所に
   おける実証実験に協力し、ニーズ・シーズのマッチングにも大いに貢献している。また、令和5年度から、全国からの見学
   者受入れ、出張研修会を予定するなど、さらなる成長や外部への波及効果および福祉業界全体への貢献が期待できる。
  ・令和4年度全国老人福祉施設大会・研究会議において「ICT介護ロボット活用で現場革新」を事例報告発表し、ICT介護ロボ
   ット部門において優秀賞を受賞(全国1位)
  ・厚生労働省の「介護ロボットのパッケージ導入モデル(改訂版)」介護ロボット取組事例集の『経営者から見た介護ロボッ
   トの導入』欄に掲載紹介された。
  ・事例発表
   令和5年「介護用品、介護施設向け設備・サービスに特化した専門セミナー」の介護テクノロジーコース部門で『DXの導
   入・推進で介護現場革新!』と題し実証の効果と今後の全国老人福祉施設協議会の展開について発表。
   令和5年「介護ICT推進セミナー」にてICT・介護ロボット活用による現場革新事例を発表。
  ・各賞の受賞と県のパンフレットへの掲載 
   県の「がんばる介護事業所」の『自立支援部門』で令和3年度と4年度、『雇用環境部門』で平成28年度と令和2年度に受賞
   した。取組み内容についてパンフレットにも掲載されている。

 

     ICT機器(文書管理・介護記録ソフト関連)新規導入による成果

  ・勤務時間内における記録時間は、導入前の33分から17分に削減
  ・記録内容は、6,713字から13,162字に充実
  ・文書作成から決裁に要する時間が削減できた(4.8日→1.5日)
  ・個別ケアをさらに推進できた
  ・記録ソフトと眠りスキャンの連動によりデータが一元化、課題抽出も容易になった。これにより時間をかけずにケア方針
   を検討、実施できることとなり高品質サービスの提供に繋がっている。
  ・職員アンケート結果では半分がICT機器の新規導入に満足と回答。
  ・紙資源の削減によりコスト低減に繋がった。

    介護ロボット(眠りスキャン)の導入による介護サービスの質の確保

         ・眠りSCANの運用支援プログラムも活用し、睡眠課題を確認することにより改善のための介入を集中的に実施できた。
  ・介護ロボットの活用により得られたデータから状態に応じた適切な対応が出来るようになり、睡眠の質が向上したほか日
             中の活動量が増加するなど利用者の生活の質の向上に繋がった。


  

仕事と家庭の両立支援制度

  ・平成26年度「仕事と子育て両立支援企業」、平成28年度「女性が輝く元気企業賞」を受賞。また、令和4年度には「女性活
             躍企業」に認定されている。

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