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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 社会福祉法人 北海道・東北

事例No.0643

1.取組の背景

 法人におけるICT化の促進のきっかけは、元々本部に長く在籍していた担当者が、令和2年度に本部から特別養護老人ホームに異動したことだった。当該施設では、全体的に研修に消極的な雰囲気や業務改善が推進されていないなど、法人内の他事業所と比較して立ち遅れていると感じられた部分が多くあった。その是正を図るため、ICT化と感染対策の推進から開始した。

2.取組の内容

 

 令和2年度 見守りケアシステム内蔵低床ベッド62台、無線LAN及びインカムシステム

(ネックスピーカー型デバイス30台、iPodtouch30台、ネック型スピーカーマイク30台)導入。
※自治体の介護ロボット導入事業  見守り機器の導入に伴う通信環境整備事業受配による。令和2年度 簡易陰圧装置(多床室×2台、静養室×2台)整備。
※自治体の地域密着型サービス拠点整備費等補助事業受配による。
令和3年度 自動体位変換機能付エアマット10台、モバイル介護ソフト、タブレット15台、Bluetooth体温計(皮膚赤外線体温計7本)、Bluetooth血圧計(手首式デジタル計12台)、ノートパソコン5台、モバイルルーター5台。
※自治体の介護ロボット導入事業、ICT導入事業受配による。
令和3年度 ゾーニングのためのシャワー室整備1、家族面会室の設置2
※自治体の地域密着型サービス拠点整備費等補助金受配による。
令和4年度 バイタルセンサーマット29台、自動シフト表作成ソフト導入

3.取組の効果(改善点)

令和2年度 見守りケアシステム内蔵低床ベッド、無線LAN及びインカムシステム導入

(1)見守りケアシステム内蔵低床ベッド

 入所者のADLに合わせ、段階的に見守りモードの設定を行うことが出来ることから、入所者の動きを速やかに察知できるようになり、転倒リスクが軽減した。また、センサー反応の時間などを管理するパソコンに反映させる事で、夜間帯の行動等も分析することができる。こうしたデータを今後他に活かせないか検討中である。

(2)無線LAN及びインカムシステム

 ア.介護業務中の情報共有が円滑になることで介護者の移動負担が軽減 

   職員間の情報共有が迅速かつ円滑になり、報連相及び移動時間の短縮に繋がっている。

 イ.介護業務中、リアルタイムに情報共有が図られることで、より迅速な対応が可能となった(より安心・安全な介護サービス

   の提供)。

   職員のヘルプをすぐに要請出来るため、迅速な対応が出来るようになり、入所者の方にお待ちいただく時間が短縮した。

   特に、ベッドへの移乗介助が必要な利用者(※介護を拒否することが 多く転倒も度々ある)の対応に際し、インカムを通し

   て情報を共有(※移乗を行えたか、拒否があったか等)することが可能となり、インシデント対策としての実効性が高い。

 ウ.避難訓練時にも有効活用できるなど、日常業務以外にも活用の幅が広がっている。 

令和2年度 簡易陰圧装置の整備

(1)静養室2室各1台

 新型コロナウィルスに限らず、インフルエンザウィルス等の感染リスクの高い疾患利用者が生じた場合に、固定陰圧装置が設置された常設の静養室2室各1名にて速やかに隔離し、施設内感染拡大の防止に寄与している。

(2)多床室2室各1台

 感染が拡大し、隔離が上記(1)の静養室で不足する場合、2つの多床室(4人部屋)を陰圧室化することで最大8名の隔離を可能とし、更なる拡大の防止が可能となった。

令和3年度 自動体位変換機能付エアマット10台

(1)自動体位変換機能付エアマットを使用することにより、褥瘡リスクが高い利用者の褥瘡予防に繋がっている。
 また褥瘡が発生した利用者に使用することで改善するケースも多い。15分毎にスモールチェンジし、同じ部位に圧力がかかるのを回避することで褥瘡予防になっているものと思われる。


(2)電源を入れるだけで利用者の体格や体重に合わせて固さが自動調整されるため、スタッフによるエアマットの堅さ調整などの操作が不要となった。

令和3年度 自動体位変換機能付エアマット10台、モバイル介護ソフト、タブレット15台、Bluetooth体温計(皮膚赤外線体温計7本)、Bluetooth血圧計(手首式デジタル血圧計12台)、ノートパソコン5台、モバイルルーター5台

(1)モバイル介護ソフト及びiPad

 これまでは、食事・水分・排泄・入浴・レクリエーション等の各種記録については、ステーションのデスクに設置されたパソコンに入力し、全て紙面で管理していたが、iPadにモバイル介護ソフトを導入したことにより、タイムリーに記録(入力)を行うことが出来るようになった。デスクに戻ることなく記録(入力)が可能となったことで、入所者対応中のメモ帳等への記録や記憶の失念が減少し、業務効率化が図られた。 また、業務引き継ぎ等における紙面出力も不要となり、紙使用量の削減にも繋がっている。

(2)Bluetooth体温計及びBluetooth血圧計

 これまで、毎日の測定の際には、手元のメモ帳等に記入し、全対象者の測定終了後にデスク設置のパソコンに入力していた。機器の導入により、即座に介護ソフトにデータが送信され、測定のみで業務が完了するようになり、業務効率化が図られた。

(3)ノートパソコン5台、モバイルルーター5台

 モバイルWi-Fiルーターの通信を用いて、訪問先に持参したノートPCから事務所据置のPCをターミナルPCとして、リモートデスクトップ機能で接続。リモートデスクトップ接続により、訪問先からタイムリーに介護ソフトに直接入力することで、これまで事務所に戻り情報を入力していた作業を省略可することができるようになった。また、モバイルWi-Fiルーターの通信不能地域・居宅等もあることから、ノートPCに事前に介護ソフトをインストールしておく。訪問時、通信不能等の状況であった場合は、このインストールされた介護ソフトに直接入力することで、事務所に戻ってから、サーバーとの同期を取り反映させることが可能である。居宅職員の記録業務の効率化・省略可が図られ、時間外労働の削減につながった。また、これまでデジタル化に抵抗感を示していたスタッフのICTへの抵抗感が緩和され、ICT導入に対する理解向上に繋がった。

令和3年度 ゾーニングのためのシャワー室整備、家族面会室の設置

(1)ゾーニングのためのシャワー室整備

 建物2階は、一直線に配置されている構造上、新型コロナウイルス感染者が発生した場合、すべてレッドゾーンとなる。今回の整備により、1階の浴室・特殊浴室を使用する場合には、非感染者と交錯することになる。感染者発生時は、感染者と非感染者の動線を分離して、感染拡大リスク低減を図り、簡易的ながらも2階で入浴(シャワー浴)できるようになった。

(2)家族面会室

 新型コロナウイルス感染症の対策方針等により面会制限のある場合でも、出来る限り入所者本人又は家族の面会希望に応えられるよう、2方向から出入り可能で且つ対面に近い透明パーティションと換気設備により、空間を分断した安心安全な面会が行える空間の提供を図った。感染経路遮断とつながりや交流による入所者の心身等QOLの維持・向上を図ることに寄与している。

令和4年度 バイタルセンサーマット29台、自動シフト表作成ソフト

(1)バイタルセンサーマット29台

 薄くて軽いフィルム状の高感度センサーをマットレス下に敷くだけで心拍と呼吸がモニターされ、眠りの深さの評価が可能である。入所者に違和感を与えることなく、体調の変化や利用状況を可視化できるようなることで、介護職員の負担を軽減し、以て直接介護サービスの質の向上に寄与している。特に、夜勤帯の見守り業務時、入所者の状態変化をモニターで把握できるため、記録などの間接業務を行いつつ見守りが可能となった。介護職員の身体的・精神的な負担軽減に繋がるとともに、目視ではわからない状態変化にも迅速に対応可能となったことで、看護の質の向上と入所者の健康維持に繋がり、職員・入所者双方に高い効果を発揮している。

(2)自動シフト表作成ソフト

 介護・看護部門等の勤務表作成担当者は、毎月、必要人員数を念頭に置きながら休みの希望や組み合わせなどを考慮し、シフト表作成に相当な時間を費やしていた。この作成を自動シフト表作成ソフトを利用し、ベースとなるシフトを組成後、細かな修正は手作業で行うことで、間接業務の時間を短縮且つ直接ケアにあたる時間の増加を図り、業務効率化・省力化に寄与している。介護・看護職員の間接業務を軽減することで、直接ケアの向上と時間外労働の削減が可能となった。

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