雇用管理サポートシステム

事例No.622

○主な事業:特養 ○法人形態:社会福祉法人・社協 ○地区:関東

取組の背景

 離職率が高い原因の一つに、介護記録の非効率さがあると考えていた。具体的には、シフト時間内は介助業務が中心のため記録業務まで手が回らず、シフト業務が終わった後に介護職の記憶や簡単なメモを頼りに時間外で記録作業を行っていた。そのため、保育園のお迎えや家庭生活への支障もあり、仕事と生活の両立を難しくしていた。また、記録自体も不正確となり、記録の中身も足りない内容となってしまっていた。また、職場環境改善や人材確保にも力を入れようと考えていた。

取組の内容

①ICT導入による業務改善
 2011年からiPadを使った介護記録を開始した。ICT導入には、抵抗を示す動きもあり、個々の介護職員の理解を得ることが必要であった。最も受け入れに抵抗のない部署から導入を開始した。この部署でスムーズな移行が実現され、ICTに慣れることで簡単であることや効率の良さ等を他部署にPRしてもらった。この結果、導入希望の声が多く聞かれるようになり、全体展開完了までに8か月程度かかったが大きな支障なく導入を完了できた。
 また、ネットワークケーブルの敷設工事を段階的に行うことで、支出を可能な限り減らすことができた。

②人材確保対策
 2017年度からEPAによる外国人労働力の活用にも力を入れている。既に4年間で9人を受け入れており、言葉や文化の違いを職員相互が理解し合い、円滑な介護サービスに協力して取り組む体制が整ってきている。EPA介護人材の教育に関しては県の助成金が活用でき、講師を招いての日本語学習(オンライン含)、介護福祉士実務者研修、介護福祉士試験対策講座、喀痰吸引の実地研修などを本人たちの負担なしに提供している。
 また、複数の支援担当者を設定して、外来付き添いや金融機関窓口での付き添い、在留資格や住民票関係の行政手続きの代行、住居不具合時の応急対応など、さまざまに支援を行っている。コミュニケーション面では本人たちの日本語力に頼る部分は大きいが、オンラインの翻訳ソフト等を活用することでも意思の疎通を図っている。

③男性の育児休業の取得など雇用における環境改善
 育児休業取得予定者には休業前に復帰支援プログラムを行う。業務の引継ぎや整理は、本人と所属部署の長と人事の三者間で確認し、休業者本人の懸念を少なくすることとした。また、代替要員を確保することで所属部署の人員不足を防ぎ、本人も安心して休業に入れるようにしている。
 当法人では、年間公休数119日に加えて介護・子の看護休暇を有給とし、コロナ禍では学校休校時等にも有給の特別休暇を付与するなど、家族都合の休暇を取得することに寛容な風土を醸成するよう努めている。

④様々な委員会活動の実践
 業務改善委員会、リハビリ委員会など独自の委員会も開催して、業務・環境の改善や質の向上を図っている。介護職、看護職、生活相談員や介護支援専門員の他、委員会のテーマに関係する他の専門職(管理栄養士、リハビリ職)で構成されている。2017年から、リハビリ委員会が中心となりICTを活用したADLモニタリング・バーセルインデックスによる評価を開始した。

⑤雇用管理責任者の役割 
 雇用管理責任者は、日頃から各現場の職員とのコミュニケーションを図り、課題の把握に努めている。

取組の効果(改善点)

①時間外労働の解消
・介護記録のICT化により効率よく介護記録の入力ができるため、時間外労働の解消に繋がった。
 【3月時平均残業時間 導入前13.17時間→導入後8.12時間に減少】
・ワークライフバランスがとれて働きやすくなるとともに、介護職が介護に集中できることにより、介護サービスの質の向上が図られている。

②外国人人材活用の効果
・ネイティブのように日本語を使えない外国人と日常的に協働することは、利用者支援技術の向上にもつながっている。また、「優れた手法や技術を伝えよう」という日本人職員の意識も醸成された。

③育児休業・有給取得・離職率について
・令和3年に1名の男性介護リーダーが育休を取得した。
・有給取得については、平成24年では平均取得日数5.74日であったが、令和3年には10.24日に伸びた。
・平成26年には30%近くあった離職率は、令和3年には14.29%になった。

④委員会の効果
・LIFE(科学的介護情報システム)の効果的な活用にも委員会が大きく貢献しており、LIFEの導入も円滑に進んだ。ADLモニタリング・バーセルインデックスにより、ご利用者個々の生活状況や能力についての客観的データを共有し、各専門職のアセスメント等にも活用できている。

⑤雇用管理責任者の役割 
・各職場に対して意識的に関わるように努めていることにより、現場からの声も吸い上げやすくなり職場環境改善にも協力が得られやすくなるなど、結果のフィードバックが容易になっている。特にICT導入の際、理解の早い部署から導入を図り協力を得ることができ、それを周囲に波及させるための体制づくりがスムーズにできた。