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有料老人ホーム 社会福祉法人・社協 九州

事例No.0618

取組の背景

当法人では、人口オーナス期(※1)到来による生産年齢人口(※2)の減少に伴い、入職希望者数の減少といった課題に直面していた。加えて、2015年頃までの離職率は10~15%という高い水準が続いており、職場内の課題抽出と環境の改善が求められた。
男女に共通した重大なライフイベントの一つに「出産・育児」があげられる。当法人においては、女性の産前産後休業並びに育児休業の取得率は100%であった。一方で、男性の育児休業取得率は0%であり、男女間の取得実績に大きな差が生じていた。
そこで、働き方改革による課題の改善及びライフイベント「育児」への積極的参加への支援を通じて、従業員のQOL(※3)向上並びに離職率低下の実現を目的とした。

  • (※1) 人口オーナス期・・若者の比率が少なく、高齢者の比率が非常に高いこと
  • (※2) 生産年齢人口・・15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる人口層
  • (※3) QOL・・Quality of Life(生活の質)

取組の内容

  • (1)次世代活躍及び女性活躍を推進する担当部署「経営企画室」による活動
     2018年「経営企画室」を設置し、主に次の業務を担当した。
     ① くるみん認定取得に関する目標設定:男性育休取得者誕生、産休・育休前面接の実施等
     ② ユースエール認定取得に関する目標設定:年次有給休暇の取得を平均10日以上等
     ③ ①・②の認定取得に関する研修会や説明会の開催:子育て応援セミナー、制度導入時の説明会等
     ④ ①~③までの活動に関する広報活動:産休・育休取得者の声を社内に発信、年次有給休暇取得の呼びかけ等
  • (2)育児休業取得促進に関する制度設計
     男性による育児への積極的参加の実現により、夫婦間のパートナーシップが向上することを目的に、次に掲げる制度を導入した。
     ①育児目的休暇制度導入:出産への立ち合い、里帰り、学校行事への参加時等に取得可
     ②育児休業取得期間中における給与保証制度導入:月額給与上限13%を別途支給
     ③子育て休業サポート手当導入:産休・育休取得者が休業中の間、約6か月間にわたり他の従業員へ手当を支給
     ④配偶者出産休暇導入:出産予定日の3日前から取得可
  • (3)働き方改革による課題の改善
     KJ法(※4)を用いて業務上の課題抽出及び解決策とそのアクション等を検討した。主に次の課題に取り組んだ。
     ①環境整備:整理整頓、清掃マニュアルの作成等
     ②情報の共有化:担当者不在時でも業務が分かるようマニュアル作成、ホワイトボードによる情報共有化等
     ③年次有給休暇の取得促進:アンケートによる課題抽出、数か月前の段階での取得計画を作成等
  • (※4) KJ法・・1枚の紙に1つずつアイデアを書きグループごとにまとめて整理する方法

取組の効果(改善点)

  • 2018年よりホワイト企業認定(くるみん認定、ユースエール認定)の取得を経営方針に掲げることで、職場内への方針の共有化を図り、加えて業務の効率化に対する意識が向上した。
  • 育児休業取得促進に関する制度設計により、従来の女性の産休・育休取得率100%に加えて、2019年には男性の育休取得率100%(計4名、2週間~1ヶ月間の取得)が実現した。育児休業中の業務を別の職員へ引き継ぐため、業務の棚卸が必要となった。その結果、一時的な負担増にはなりつつも業務の偏りを見直すきっかけが生まれ、何よりも「育児と仕事の両立」への理解や「時間管理」に対する職員一人ひとりの意識が向上した。
  • 「年次有給休暇の取得促進」については、本年度1月時点と前年度3月末時点を比較したところ、平均10日以上取得者が既に2名増加した。
  • KJ法を用いた働き方改革では、「環境整備」を行うことで、目的の書類や物を探し取り出すまでに要していた時間を約50分(月)削減することができた。
  • 「情報の共有化」を行うことで、以前と比べると「退勤後の職員に(電話等で)確認していた作業が減った」と80%の従業員がアンケートに回答した。
  • KJ法活用のメリットは、普段は発言しづらい若手職員の意見を拾い上げることであり、世代や職位に関係なく従業員一人ひとりがそれぞれ抱える業務上の課題を取り上げ、協力して解決する機会を作ることで従業員同士の関係性の質を高めることにも繋がった。

これらの活動により、2020年には「令和元年度県女性活躍推進事業者表彰」受賞、「くるみん認定」取得、「ユースエール認定」取得が叶い、さらに2021年には厚生労働省が管轄する「働き方・休み方改善ポータルサイト」に働き方改革の取組事例が掲載されるに至った。 なお、離職率においては2018~2020年の間、3~8%の水準を維持している。

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