雇用管理サポートシステム

事例No.605

○主な事業:有料老人ホーム ○法人形態:民間会社 ○地区:九州

取組の背景

 誰もが働きやすい職場環境づくりをしていく一歩を踏み出すきっかけとなったのは、改革を発信できる立場にある部長が自身に障害の子をもったことで、障害の特性を知ったこと。
 また、ケアを必要とする家族を抱える環境にいる者は職場からの配慮が無いと就業継続をしづらいと気づいたことであった。
 職員にヒアリングをしたところ、がんや病気を患っていたり、障害のある家族をもつ職員が複数人いることが分かった。
 そういった職員にとって働きやすい職場環境づくりが必要であると感じた。
 家族の問題だけでなく、職員本人がうつ病やこころの病に苦しんでいる者もおり、急遽気分が沈み途中で職場を抜け出す事例も発生した。
 気持ちが落ち着いて職場に戻ってきた際に、どこまで仕事をしていたのか忘れてしまっていることもあり、一緒に働く職員もフォローが出来ない状態で、職場の雰囲気が悪い状態になることもあった。
 また、発達障害をもつ職員にとっては、覚えたくても覚えられないことがあり、聴覚での情報よりも、見える化をすることで、視覚で情報を伝えたいと思った。
 障害や制限をもつ職員自身の出来る仕事と出来ない仕事を分別することができると、人員を適材適所に配置することが可能であると考えた。
 その他に、子育てや介護などで、仕事を続けることが困難になり退職をする例もあり、このような理由での退職を防ぎ、人材不足を解消したいと思った。

取組の内容

 業務を洗い出し、細分化していくことで、誰がいつどのような仕事に取り組むべきかを分かりやすくなるようにチェック式の表や手順書を作成し、見える化をして共有できるような仕組みづくりを行った。
 業務を洗い出す作業には少し苦戦したが、仕組みをつくること自体はスムーズに行うことができた。
 1番の難関は、職員間の気持ちを一つにし、目指すところを一つにしていくことであったが、最初は抵抗があった職員に対しても、面談の機会を設けて、一人ひとりに対して丁寧に、人材不足である事業所の状況や、適材適所で働くことのメリットなどを伝えていくことで、徐々に解決することができた。
 職場改革を進める者が、途中で諦めずに発信を続けていくことで、結果的には職場全体で取り組む体制を整えることが出来た。
 見える化は「いちいち細かく」を合言葉に、細分化している。
 「朝」という項目であれば、「チェーンを外す」「ポットにお湯をいれる」などの項目があり、障害を抱える方や高年齢の方、初心者だけでなく、「気の利く人」「慣れた人」だけに負担がかからないようにしている。
 1日分のチェック項目は約100項目程度あり、1日分をA4用紙1枚に収め、ボードに挟み、誰が行ったか手書きで順次チェックしていている。
 「見える化」の工夫は、利用者さんの介護の場面ごとにも行われており、利用者さんの自立を促すためにも、どの段階でどの程度の介助を必要とするかも見える化されている。
 例えば、入浴介助時では、「着替えの用意は自分で出来る方か」「使用しているのはリハビリパンツか」「認知症が進んでいるので、静かな環境での入浴を要する」など一目でわかるように利用者さんそれぞれA4用紙1枚にまとめていて、ケアの統一にもつながっている。
 また、「送迎のみ」のスタッフを「ピクシースタッフ」、調理員を「スマイルスタッフ」などの名前をつけることで、裏方意識をもちやすい方たちの自己肯定感を高めて、連携の気持ちを強くするような取組も行っている。

取組の効果(改善点)

 子育て、介護、看病、学業、療養中など職員それぞれの事情にあわせて勤務体制を整え、さまざまな働き方が可能な柔軟な雇用を実現している。
 そのことにより、勤務継続が難しかったスタッフが退職を取りやめるなど、平成28年には40%であった離職率が、平成30年度には8%に減少した。
 勤務体制は「勤務時間」と「勤務内容」を柔軟にすることでさまざまな事情を抱えるスタッフの雇用を継続できている。
 「勤務時間」は月2回のみや朝の3時間のみ、夕方の3時間のみなど、「勤務内容」は清掃のみ、盛り付けのみ、送迎のみなどである。
 細分化したことにより明確化した「介護職員が行わなくてもよい仕事」を短時間勤務のスタッフに割り当てることで、人手不足解消にもつながっている。
 短時間スタッフは地域に住む無資格の高齢の方を主に雇用しており、地域貢献にもつながっている。
 見える化のチェック表により、顔を合わせずとも既に行った仕事の内容の確認がすぐに出来ることや手順書が明確化されていることで、スムーズな情報共有が可能となり、少ない出勤日数の方の継続勤務のしやすさに繋がっている。

 令和元年度には市の「魅力ある介護の職場づくり表彰」で優良賞を受賞した。