雇用管理サポートシステム

事例No.604

○主な事業:有料老人ホーム ○法人形態:民間会社 ○地区:中国・四国

取組の背景

 医療品販売や在宅医療業務(調剤/服薬管理)に携わってきた中で、医療・介護現場における情報伝達の難しさを肌で感じ、それが介護施設や自宅で治療や療養に専念できる「在宅医療」の大きな障害になっていると考えるようになった。

 この課題に立ち向かい、地域医療に貢献すべく、2014年から介護事業所の運営を始めた。

 「諸記録が紙ベースであったため、その作業に追われ残業が増える」「申し送りや医師や薬剤師への情報伝達が口頭のため、ミスコミュニケーションが起きる」等、情報共有が円滑に行われず、個々人の作業効率にもバラつきが見られ、介護現場における労働環境は悪化の一途を辿りその結果、スタッフの離職は増え、開設して1年間で22名のスタッフの内、11名が離職し、情報伝達の難しさを実感した。

 そこで、紙ベースからデジタル化することで、スムーズ且つ正確な情報共有が可能となり、それによって労働環境の改善が図られるのではないかと考え、当社の求める情報共有に特化した医療・福祉関連システムを調査したが、納得のいくシステムがなかった。

取組の内容

①自社で「情報共有」「医療連携」「人材育成」をコンセプトとした独自の在宅医療情報共有システムを開発することとした。
 ・自社、自組織内で必要とする情報の多くを一元化し、同じ端末画面から操作、連動させる。
 (介護情報+社内情報、勤怠他電子申請化⇒情報管理のプラットホーム化)
 ・外部クラウドを活用することで投資額を抑える。
 ・「見える化」「全ての情報は個人管理しない」という方針を徹底する。

②当社介護事業所でシステムの運用開始
 ・諸記録等の帳票類をシステム(PC/iPad端末に設定)に取り込み、ペーパーレス化
 ・薬剤情報・ケア記録・バイタル記録等を医師や薬剤師とクラウド上で共有(医療連携の構築)
 ・個人ケアマニュアル機能により利用者個人に合わせたケアマニュアルをテキストで見れる。
 ・先輩スタッフによるケア動画をアップロードし、いつでも見て学べるようにする。(人材育成プログラム作成)
 ・セキュリティ向上、システムスピードアップ、カスタマイズ機能強化
 ・カメラを連携し、利用者の状況等(例:あざ、ケガ等)を写真でよりわかりやすく情報共有できるようにした。

③導入、運用の定着に当たって取り組んだ内容
 ・職務の生産性向上及び効率化の手段としてICTツールの活用が重要であることを、研修、朝礼等で浸透させた。
 ・スタッフ更衣室にシステム画面を設置し、朝礼前(業務時間内)に利用者一覧画面で変更点など重要引継ぎ事項の確認を行うようにし、朝礼時間を短縮した。

取組の効果(改善点)

 「施設内での情報の共有」が重要であり、職員がシステム画面を閲覧することで効率よく引継ぎ、伝達が可能となり業務効率の向上、省力化に繋がった。
 時間と気持ちに余裕ができ職員間の意見交換も活発になり、パート職員中心でも業務がうまく稼働するようになった。

①システム導入後、自社介護事業所の離職者ゼロ。(2016年度~2018年度)
②システムの外販を開始(介護事業所へ自社の経験を含め提案)
③情報の円滑化と申し送りの時間短縮による残業ゼロ時間を実現(月30時間⇒ほぼ0)(スタッフの定着化)
④当介護事業所ケアスタッフの有給休暇消化率約70%(2019年12月末時点)
⑤介護事業所の入居率 65%  → 満床を実現
⑥残業時間減、離職減による人件費10%削減(2019年度) → 賃金10%増の昇給原資へ
⑦有給休暇取得率職員60% → 全体で70%以上取得できる様になった。(管理職含む)