雇用管理サポートシステム

事例No.569

○主な事業:特養 ○法人形態:社会福祉法人・社協 ○地区:北海道・東北

取組の背景

 求職者が介護職を選択することが少ない状況となっている要因の一つに、介護職の「魅力とやりがい」をうまく発信出来ていないことが挙げられる。
 介護職のステータス(価値観)を上げ、介護職の「魅力とやりがい」を発信していくことが重要であり、事業所において魅力ある職場作りに向けた様々な取り組みを行い、介護職員のレベル・スキルアップをすることが、人材確保と定着に繋がるものと感じていた。

(1)介護職は「何でもやらなければならない」というイメージがあり、業務に追われているのではないか。もっと専門性があり、やりがいのある働きやすい職場を作り上げていきたい。

(2)安定した体制を構築するために、常勤・非常勤職員ともに数名を採用したい。ハローワークに求人登録するも問い合わせはほとんどこない。過去2回紹介業者を活用したが、半年足らずで退職した経緯があり、紹介業者には物足りなさを感じている。

(3)地域(町内会・小中学校)との交流、他介護事業所との連携を実施しているが、介護職の魅力発信と介護現場の業務改善に向けた協働の取り組みが必要だと考えている。介護職を知ってもらい、将来「介護の仕事をしてみたい」と思ってもらえる子供を育てていきたい(裾野拡大)。

取組の内容

(1)働きやすい職場環境作り

 ①都道府県委託事業の介護従事者定着支援事業による相談支援(3回)で業務改善のアドバイスを受け、介護スタッフのスキルに合わせた「介護業務の分業化」に取り組むこととした。仕事の目的と適材適所配置を職員と共有しながら、フルタイム職員は利用者サービス(介護)に特化し、清掃・洗濯・様々な準備等のサポート業務にはパートを新規採用し、分業化を一部スタートさせた。

 ②職員休憩室の改善(5畳→25畳)。介護労働安定センターの支援による健康確保相談(メンタルヘルス)。

(2)人材確保、人材育成

 ①人材確保として、介護労働安定センターおよびハローワークの支援を受け、ハローワーク同行訪問(魅力ある求人票作り)、介護看護就職デー人材合同面接会への参加、他介護事業所との合同就職相談会の実施に取り組んだ。

 ②人材育成として、5ヶ年計画で「リーダー職育成コンサルタント」を実施している。昨年までの3ヶ年はチームマネジメントについての知識習得期間として、今後2ヶ年はキャリアパスを描きながら、実際に働く介護現場でチーム運営計画を立てて実践していく実習期間とした。

 ③高等学校との連携を図り、交流から始め、ボランティア、実習、その他様々な関係を築いていくことで、将来の就労の選択肢の一つになることを期待した取組みを実施している。

(3)地域との交流・他介護事業所との連携 

 ①町内会と施設とのイベント交流(相互参加)、保育園・小学生の慰問(年2~3回)、中学校の福祉授業の施設訪問(月1回)を実施している。

 ②数年前から実施している他介護事業所との交流において、介護職の人材確保には事業所間の連携に加え、行政と介護事業所が一体となった取り組みが必要との認識を持っていた。
 そこで今般、当施設を含めた介護老人福祉施設3ヶ所が市役所・市社会福祉協議会に提案し、5団体による「市特別養護老人ホーム連絡協議会」を発足した。今後、運営要領決定、市全体としての人材確保への取り組み、定着に向けた協働、他事業所との職員交流等を検討していくこととした。

取組の効果(改善点)

(1)働きやすい職場環境作り(業務改善=分業化)

 ①当初は職員に多少の不安もあったが、時間とともに職員から「目的もはっきりし仕事に集中できる」「利用者に今まで以上のサービスができるようになった」と好評であった。
 職員のレベルアップ、スピード化(待たせない)、業務効率、リスクマネジメントにも繋がり「分業化」の手応えを感じている。また、介護未経験者でも働ける環境があることを知り雇用確保にもつながっている。今年度は「物による業務改善」として、センサー付ベット、インカム配備(職員間無線)、身体負担を軽減する靴貸与を実施する。職員が安心して働けることで、より良いサービスに繋がり、魅力ある職場環境と職員の定着に繋げていきたい。

(2)人材確保
 ①介護看護就職デーと合同就職相談会で7名の施設見学者があり、興味を持ってもらい間口を広げる良い機会となった。来年度以降も継続して取り組んでいきたい。

 ②「リーダー職育成コンサルタント」は本人はもとより、上司・同僚・部下共々成長を実感している。リーダーとしての自覚と的確な指示出しが身についてきた。

(3)地域との交流・他介護事業所との連携

 ①介護現場だからこそできる発信を継続していく。将来、施設見学をした生徒と一緒に仕事が出来たら最高に嬉しい、という希望ができた。

 ②「市特別養護老人ホーム連絡協議会」の活動により、介護職員の確保・定着に繋がっていくことを期待している。他介護事業所のオブザーバー参加も可能である。
 また、行政側は他市(政令指定都市)への通勤流出に歯止めをかけ、当該市に居住し、地元の介護事業所に勤務する住民を多くしていきたいと語っていた。加えて行政の移住施策の一端を担う取り組みも検討し始めた。