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特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
社会福祉法人・社協
九州
事例No.0593
取組の背景
- 利用者の要介護度の重度化(平均3.5~4)及び重度の認知症の方が増えたことに伴い、介護業務の負担が増大して腰痛をかかえる職員が増加し、求職者や離職者も出るようになっていった。
- 職員の年齢は20代から70代と幅広く、小柄な女性、妊娠中の方や高齢者も多く業務の負担を減らしたかった。
- 腰痛を抱える職員に対して職場環境の改善が必要だと考えた。
- 介護現場の3K(きつい・汚い・給料安い)という間違ったイメージを払拭し、職員の定着を促したかった。
- 介護機器等の積極的な導入を図ることによって、慢性的なマンパワー不足を少しでも解消できるのではないかと考えた。
以上のような背景があり、"抱え上げない介護"の導入を検討した。
取組の内容
- 介護機器の選定
以前購入したリフトやシートは、使用に制限があったり、ネットの素材が固く、使用すると痛みが伴うため、新たな機器を導入した。 - これまで導入した機器
移乗用リフト 10台[旧型と比べ脚部が50%薄く、低床ベッドでも使用可能]
リフトシート 55枚[6種類試し利用者に決めてもらった。リフトでの移乗が必要な利用者一人に一枚以上確保する。]
跳ね上げ式車椅子 18台
移乗用ボード 9枚
マルチグローブ 25組[容易な体位変換や背・脚抜きが可能]
スライディングシート 10枚 - 職員の内部研修 全職員を対象とし、理学療法士を講師に招いての研修等を行って、幅広い知識や技術を学んだ。
- 家族懇談会で機器の使用を実演し、家族にもベッドからの移乗を体験してもらい理解を得る努力をした。
- 定期的に開催している介護カフェで、地域にお住いの方へ"抱え上げない介護"の取り組みを紹介する。
- ノーリフト委員会での検証 ①適正な機器の選定 ②実施状況の確認 ③新な利用対象者の検討 ④職員の腰痛状況の把握(抜き打ちで使用状況を観察し、問題があれば改善を促す。)
- 新任職員への指導 介護経験の有無に関わらず、全職員が機器を正しく、安全に運用していくため、統一した手技を習得する。(新人研修のプログラムに組み入れ)
- 機器での移乗を行う利用者には、その方法と注意点をケアプランに明記する。
取組の効果(改善点)
- 腰痛の緩和や予防
腰痛が悪化した職員、新たに腰痛を発症した職員がいなくなり、腰痛が原因による離職者がゼロになった。職員全員が「以前より介助が楽になった」「特に入浴介助が楽になった」と言っている。 - 統一したケアの提供
誰もが同じケアを提供できるようになった。人によって異なっていた移乗介助の方法が、利用者個々に合わせた内容のケアプランを立案することで、統一した方法でのケアが提供できるようになった。 - 業務分担・効率化
2人で行っていた業務が1人でできるようになり、効率的になった。入居者を待たせることが少なくなり、迅速な対応ができるようになった。
人手を要する入浴においても、全ての工程がマンツーマンで対応できるようになった。
業務の分担や効率化が図られたことで、残業が大幅に削減できた。 - アセスメントが深化した
利用者の機能をより深く理解できるようになり、ケアに活かすことができるようになった。 - 事故の減少
機器による移乗中の事故は0件。転落はもちろん、皮膚のびらん等もなくなった。 - 利用者の安心につながった
「職員に任せて安心」「移乗する際、緊張しなくていいし、痛くない」「職員に負担をかけずにすむ」などの声が寄せられた。