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事例No.0545
1.取組の背景
約2年前の代表者不在時(海外事業によりインドネシア滞在中)に、従業員の大量離職という組織崩壊につながりかねない深刻な危機があった。この経験から、単なる待遇改善だけでは人材の定着は難しいと痛感し、組織風土の抜本的な改革と従業員の働きがい向上に注力する必要性を強く認識した。また、介護事業において生産性向上推進の機運が高まる中、現場の実情に即した具体的な生産性向上策が求められるようになり、高コストな既存システムが十分に活用されていない状況も相まって、低コストで実用的なDX推進の動機となった。
2.取組の内容
DX・AI活用による業務効率化
高コストな既存システムから脱却し、Googleの無料ツールでバックオフィス業務を自社アプリ化し、マニュアルの統合、ペーパーレス化、スマートフォンでの車両点検・アルコールチェックを実現した。また、AIの活用により、月次報告書の作成や利用者の全体像のアセスメントを瞬時に行えるようになった。これにより、看護師が利用者に看護サービスを提供する際、圧倒的な情報量を持って接することが可能となり、サービスの質が向上するとともに精神的負担が大きく減少した。さらには、高機能システムが活用されていない問題を解決するため、新人でも直感的に使える情報集約ポータルサイトの構築にこだわった。
組織風土改革と人材育成
従業員の大量離職の危機を機に、待遇改善だけでなく「人間力」と「働きがい」向上に注力した。経営者向け雑誌『致知』を用いた月1回の読書会を実施し、コミュニケーションの改善と職場の雰囲気改善を図った。また、MBAで学んだ7Sフレームワークに基づき、短期改善と長期的な組織風土の醸成を両立させる取り組みを行った。さらに、多様な「サークル活動」を設け、従業員が主体的に業務改善に参加し、課題解決と標準化を推進している。そのほか、「学びながら稼げる」環境として、週1回勤務時間内に外部の専門家を招いて勉強会を実施し、従業員が専門知識を習得できる機会を提供している。
経営戦略
看護師がコア業務に集中できるよう、管理者が担っていた事務作業を専任スタッフへ移行する体制を構築した。採用戦略では、過去12年間、有料職業紹介サービスを一切利用してこなかった。知人や従業員からの紹介(リファラル採用)のみで人材を確保する方針を貫いている。また、確立したノウハウをフランチャイズ形式で展開し、他の市にも事業所を開設した。自社開発したAIソフト(看護師長の面談支援・業務短縮ツール)を全国の医療・介護施設向けに商品化する計画も進めており、「医療・介護・障害福祉の従業員が幸せになり、適正な利益を得て地域に貢献する」という志に基づき、業界全体の課題解決を目指している。
3.取組の効果(改善点)
まず、DXと組織風土改革を両輪とする改善の推進により、利益率が20~35%(年間平均 約22%)にV字回復し、利益が出ていなかった2年前の状況から劇的に改善した。離職率は大幅に低下し、過去2年間で退職者はわずか1名にとどまり、人材の定着に成功している。業務効率化では、AIの活用により、月次報告書の作成が30分から5分に短縮、利用者のアセスメントに関しては1時間の作業が5分に短縮された。結果、看護師1人あたりの訪問件数が、業界平均の4件に対し平均6件(最大8件)となった。残業もほとんど発生していない。また、管理者の事務負担が軽減され、看護師がコア業務に集中できる体制が確立された。さらに、有料職業紹介を使わない採用戦略により、採用コストの削減に成功している。