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事例No.0536
1.取組の背景
平成30年8月に開設し、8名でスタートした。今年で7年目を迎えた。
開設当初の職員構成については、法人内から異動してきた者を中心にしつつ、新規採用も行なった。
しかし、新規採用の職員は訪問介護や介護業界の経験者が少なく、人材育成や定着に時間がかかった。
また、医療機関が母体であるため、寝たきりの方や入退院を繰り返す方など、身体的な介護を要する場面も多く、知識や経験不足からの離職も目立ち始めた。
こうした課題を解決しながら、利用者に迷惑をかけることなく訪問介護事業を継続的・安定的に運営するためには、迅速かつ効率的な人材確保と人材の定着が求められていた。
特に、専門的な介護技術を有する職員の確保や育成ができれば、現職員への過度な負担が軽減されるという相乗効果が生まれることが見込まれた。
2.取組の内容
①資格手当の設定
まずは、喫緊の課題でもある介護スキルの向上を目的として、職員が上位資格の取得に意欲を持てるよう、管理者会議において、資格手当を創設した。
具体的には、実務者研修修了者や介護福祉士の資格を取得した職員に対して手当支給を行うことを意思決定した。トップダウンではなく、現場の介護職員からもアンケートや意見収集などを行なった。ボトムアップ型で実施し、全員一丸での経営を目指した。
しかしながら、一部の職員からは日常業務の多忙さなどから、学習時間を捻出することには無理があるとの意見も上がり、疲弊とモチーベーションの低下についての課題解決が急がれた。
その後、上記の課題解決のための会議を重ね、まずは取得モチベーションを上げるために資格手当の創設を決定し実行した。
(A)介護福祉士:5000円
(B)介護支援専門員:10000円
※参考例※
無資格者を採用し、働きながら受講できるよう法人で初任者研修を実施。
次年度には実務者研修を受講。
法人内で3年間の経験を積んだのちに、介護福祉士の国家試験へ挑戦。
試験前には、法人に所属する看護師や介護福祉士が行う試験対策講座に参加できる。
3年間で介護福祉士を取得した職員が複数いる。
②人材育成と定着に向けた取り組み
当事業所の大きな課題として、医療機関が母体であるため、寝たきりの方や入退院を繰り返す方が多く、ヘルパー業務においても高度で専門的な医療介護技術や知識の習得が求められる傾向があった。
そのため、どうしても知識や経験不足を理由とした離職者も多く、事業運営の安定化のためには、早い段階での人材育成と定着化に向けた取り組みが必要だった。
そこで私たちが目をつけたのは、「当事業所の母体は医療機関!!」ということだった。母体の病院には数多くの専門職が在籍している。この方々から専門的な教育を実施してもらえれば、当訪問介護事業所が「医療介護の分野において、より強い存在になれるのでは?」といった発想が浮かんだ。
医療法人から協力と支援をもらうまでには時間も要したが、地域一番の医療介護サービス事業所を確立するため、という崇高な未来ビジョンに強い共感も得て、最終的には快く協力してくれることになった。
具体的な内容について
1.看護師:医療的ケアについて
2.理学療法士:介護技術について
3.社会福祉士:社会の理解について
4.介護福祉士:介護過程などについて
多くの専門職からの直接指導が功を奏して、より高い医療介護知識と技術の習得に対する職員の意欲が高まった。現在では、多くの職員が「介護福祉士」資格を取得済である。
③経済的サポート基準の構築
初任者研修等の受講を希望する職員がいても、受講費用や家庭・その他諸事情等により諦めざるを得ないという事があってはいけないと考えた。
全員一丸となっての課題解決を目標として総合力で取り組もうとする以上は、職員が働きがいや、やりがいを感じることが出来なければ、高度な介護職員の育成・定着化は実現できないと考えた。
こうした観点から、以下のこと決定して実行した。
※経済的サポート基準※
(1)無資格者を採用した際には法人にて初任者研修を行い、資格取得のサポートを行う。
(2)無資格者が法人以外で実施している初任者研修を受ける際には、研修費用を全額法人が負担する。
(3)シフト調整を含む資格取得のサポートを行う。
(4) 介護労働安定センターが実施する「実務者研修」に積極的に申し込む(抽選で外れることもあるため)
これらの制度が実施されたことで、当訪問介護事業所で働く皆が経済的な負担などを気にすることなく、積極的に研修に参加できる環境整備ができた。
これにより、職員の医療介護に関する知識への吸収意欲も促進された。資格取得後には、「利用者により質の高い介護サービスを提供していきたい!!」という意欲と責任感が強くなり、プロ意識が芽生えるしくみ作りができた。
3.取組の効果(改善点)
★介護職員の確保と定着に成功した。
改善前8名 ⇒ 改善後15名に増員 188%
★介護福祉士職員数が増えた。
改善前の介護福祉士2名 ⇒ 改善後の介護福祉士14名 増加倍率=7倍
★全介護職員に占める介護福祉士資格保有者の割合が高まった。
介護職員15名 ⇒ 改善後の介護福祉士14名 保有率=93%
★離職率が減少した
改善前 年間 3名 ⇒ 改善後 年間0名に激減 現状の離職率は0%
★職員の負担軽減が出来た
年間残業時間(平均値)40時間程度 ⇒ 改善後0時間
★有給休暇取得率が高まった
改善前5日完全取得 ⇒ 改善後7日完全取得 100%の取得率