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20人未満 特定非営利活動法人(NPO) 中国・四国

事例No.0535

1.取組の背景

 

 「地域特有の介護ニーズに対してきめ細かく対応する訪問介護サービスの提供を行う」という運営方針に基づき、実現に向けて法人代表もプレーイングマネージャーとして、法人経営と合わせて職員とともにヘルパー実務に取り組んできた。そのため、事業所の課題であると従来から認識していた「処遇改善」「職場環境の改善」などに、経営者として取り組む時間を確保することが出来なかった。その中で、職場に対する不満が顕著になり、離職者が増えてしまった。さらに処遇改善加算の見直しや訪問介護報酬のマイナス改定があるなど、事業環境が大きく変わってきた。

 そこで、地域のためにも今後も継続して事業所を運営していきたいという強い思いから、課題解決に向けた検討に取り組み始めた。しかし、制度に精通してないため検討が難航していた中、知人からの勧めもあり介護労働安定センターの相談援助を活用することになった。

2.取組の内容

トータル的な処遇改善

1.目的:「働きがいのある・働きやすい職場」を実現し、職員のモチベーション向上・定着化を図るため

2.職場の特徴:職員の大部分が女性であり、家庭の都合により休暇を取得せざる得ないことが多いことから、仕事と家庭の両立の取り組みが求められている。

3.具体的な取り組み:①有給休暇の取得促進、突発的な休暇や長期休暇の取得環境整備、②賃金処遇の改善 ア:新たな処遇改善加算の取得、イ:職場の特徴を踏まえた手当の設定、ウ:業績手当の支給

4.工夫した点:①全職員に対して、休暇を遠慮なく取得できるように「お互い様」という意識の醸成・改革を図った。法人代表からも休暇取得の促進について、職員に日常的に繰り返し伝えている。また、突発・長期休暇の取得に対応できるように、代行支援体制を全職員と話し合いながら決めている。②未取得の状態から新加算「Ⅰ」の取得にあたっては、介護労働安定センターの相談支援を活用した。専門家のアドバイスに沿って、キャリアパス要件、職場環境要件などの整備を一つ一つ確実に進めた。③業務特性・困難性を踏まえた業務手当として、新たに「訪問手当」「サービス提供責任者手当」を設定した。また、子育て支援として「子育て手当」を設定した。④地域特性を踏まえ、人材確保・定着促進に向けて、新たに業績に連動させた「業績手当」を設定した。

5.その他:現在も全職員とコミュニケーションを図りながら、職場実態・職員のモチベーション等を把握し、「働きがいの職場づくり」に向けて更なる取り組みを進めている。 

コミュニケーションの活性化等による職場環境の改善

1.目的:①以前より女性職員比率が上がったため、特有の問題を解決し「働きやすい職場」づくりをすること、②経営方針、ケア方針に対する考え方の相違を職員相互が認め合い、不満・ストレスを溜め込まないようにすること、③提供サービスの拡大による利用者とのトラブルを未然に防止することで、職員の職場満足度を向上させること

2.現状:女性の多い職場においては、職場の人間関係に起因したトラブル・離職が多く、当該法人も例外ではなかった。具体的には、①特定の職員を共通の批判対象としてしまい、職員の孤立化を招いてしまうケースがある、②専門技術を提供する業務であることから、ケアの方針・ケア方法などについて意見が異なり対立することがある、といったことが発生していた。

3.対策:①職員の批判や悪口を言うことを一切禁止にすることを明言。②法人代表・リーダーが率先して、職員相互にフランクにコミュニケーションが取れる雰囲気、機会を作り出す。③介護保険適用外サービスである「保険外サービス」を提供して利用者の満足度を向上させ、トラブルを未然に防ぐことで職員の心理的安全性・職場満足度を向上させる。

4.効果:①離職率の低下:人間関係・経営方針・ケア方法が合わないことに起因する事由による離職がゼロとなった。②保険外サービスの提供により、利用者の満足度も向上した。トラブルも減少し、クレームが発生することがほとんど無くなった。③多くの職員から「働きやすい職場になった」という声が出るようになった。

職員研修の体系的な見直しについて

1.現状:職員研修は経営者(サービス提供責任者兼管理者)が主体となって行ってきた。

2.課題:①少人数の訪問介護であるため、馴れ合いが生じてしまっていた。メリハリが感じられず、研修の効果についても疑問が残っていた。②欠席者のフォローができていなかった。

3.対策:①研修体系や研修環境について見直しを行なった。目的・見直しの概要などについて、職員に丁寧に説明し納得感を高めた。②内部講師の他に外部講師を招き、メリハリのある研修を体系的かつ計画的に実施することとした。③欠席者については、研修資料を配布し、伝達講習を行うことでリカバリーを行うようにした。④賃金規定を見直し、サービス提供責任者などの内部講師に対して「業務手当」を新設することとした。

4.効果:①研修への参加率が向上するとともに、研修に対する満足度・モチベーションも向上した。②やむ得ず欠席となった者に対する伝達講習を実施することで、職員全員が研修内容を習得出来るようになった。家庭の都合でのやむ得ないなど、遠慮なく欠席を申し出られるようになった。③小人数の職場に特有の馴れ合い感が払拭され、良い緊張感が生まれた。業務モードから研修モードに切り替えるというメリハリ感も出てきた。④業務において研修内容を活用するケースなどもみられ、研修の効果も出ている。

5.今後の課題:全職員の資質(知識・技術・ヒューマンスキル等)の向上に向け、研修効果の確認、研修効果の更なる向上に向けた取り組みの必要性がある。

3.取組の効果(改善点)

  

 経営課題として認識しつつ未着手であった「有給休暇取得の促進」「研修体系の見直し」「経営理念に対するスタッフの理解向上」「ケアの満足度向上」「スタッフ間のコミュニケーション向上」に取り組んだ。さらに、雇用管理・能力開発などの課題にも併せて取り組むことで、処遇改善加算未取得の状態から新たな処遇改善加算の最上位区分「Ⅰ」を取得することができた。
 加算を取得したことにより、令和6年度で基本給に対する2.75%のベースアップを行なった。令和7年度は3.0%のベースアップを予定している。誓約書を作成し職員向けに公表した。

具体的には、

①基本給の改善

登録ヘルパーの時給アップ:訪問介護+40円⇒1,640/H、予防事業+30円⇒1,530円/H、自費サービス+30円とした。また、令和7年度の目標賃金は、介護事業1,690円/H、予防事業1,570円/H。自費事業+30円とする。

②業務手当の新設(賃金規定に新設)

1)訪問手当…職員の経験により訪問手当を支給する

 A:220円/H B:200円/H C:100円/H

 A:経験・技能のある介護職員(10年以上の実務経験又は介護福祉士) B:その他の介護職員 C:介護業務に携わらない職員

2)サービス提供責任者手当 

 月額2,000円

③賞与の支給

 業務実績により2回/年(8月・12月)支給

 

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