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20人以上50人未満 有限会社 近畿

事例No.0534

1.取組の背景

 

 訪問介護のほか、小規模多機能型居宅介護事業所や住宅型有料老人ホームの運営も行っている。

 介護の方針として、利用者の排泄について、どの様な方であってもトイレで行っていきたいと考えている。夜勤者1人で行うトイレ介助で、1人では介助出来ない方の場合には、オムツを使っている。

 利用者の尊厳を守るため、夜勤者1人であってもトイレでの排泄介助が行えないかと介護用機器を探した。介護ロボットやパワードスーツ等は作られているが、これらは「持ち上げる」という発想から開発された機器である。利用者の自立支援に資するものでは無く、使えば使うほど、利用者を弱らせる機器となっている。

 「人」は「物」ではない。正しい介護技術は、利用者の自立支援につながる技術であり、この技術を介護ロボットに再現したいと考えた。

2.取組の内容

 今回、意識して取組んでいるのは、利用者の体の動き(バイオメカニクス)に着目し、利用者が正しい動きが出来るように支援する技術を、介護用ロボットで再現することである。
介助者の姿勢や動き(ボディメカニクス)については、介護現場では広く教えられている。しかし、「持ち上げ」「引き寄せる」は、力を使った技術であり、介助者にとって体への負担が大きな技術である。

 当社は、24年間に渡り高齢者向け介護事業を行ってきた経験をもとに、現在、「力を入れない介護塾」を行なっている。「力を入れない介護塾」では、利用者の体の動き(バイオメカニクス)を理解し、介助者の重心移動の力で、利用者の動き(バイオメカニクス)が、正しい立位に向かう姿勢となる様に支援する技術である。

 正しい姿勢での立ち上がる動きや座る動きは、利用者の持っている力を引き出すことになる。それを繰り返すことで、筋力が付いて自立支援につながり、結果、介護者の負担の軽減にもつながる。

 

 開発に向けた取組みは、発想が有っても行える訳ではない。

 前職で、重工メーカーや電機メーカーでの品質保証業務を行ってきた経験があり、機構やシステムに若干の知識があったが、介護用ロボットを作れる訳ではない。

 1.先ず、県地域産業振興センターに相談し、事業内容の説明を行い支援をお願いした。

 2.県地域産業振興センターより県内の発明協会(一般社団法人)を紹介され、特許申請について教えてもらった。

 3.ニーズ・シーズマッチング事業2024厚生労働省委託事業の登録を行なった。

   センサーやモーター、駆動装置等の参加メーカーを紹介してもらった。

 4.県地域産業振興センターより、県内でロボット開発を行っている企業を紹介してもらった。

 5.ニーズ・シーズマッチング事業2024からも共同開発メーカーを紹介してもらった。

   ロボット外装技術に関わる事業所に協力依頼をした。

 6.県地域産業振興センターより、事業再構築補助金について紹介してもらった。また、申請に際してサポートも受けることができた。

 7.発明協会より、特許申請に対しての支援、申請手続のための弁理士の紹介を受けた。

 8.事業再構築補助金の決定は今後となるが、採択の如何に関わらず、特許申請とロボット開発を進めている。

 

 県地域産業振興センターの方と事業再構築補助金の申請書を作成するに当たり、事業内容の見直し及び、実施可能となる様に、事業内容と計画を作成した。

 1. 環境分析

 介護が必要な方がピークとなるのは2040年頃だが、更に、その後の30年を考えても、介護は益々必要とされる。他方、介護をする職員数は、2021年から減少に転じている。

 2. 市場の確認(法人ターゲット・個人ターゲット)、市場の状況を確認。

 3. 市場のニーズの確認、特別養護老人ホームの相談員、介護老人保健施設の責任者、小規模多機能型居宅介護事業所の責任者、福祉用具レンタル卸の所長、福祉用具レンタル事業所の社長等に説明を行い、ヒヤリングを実施。

 4. 優位性の確認、現在、販売されている介護用ロボットと制作して販売したい介護用ロボットの比較を実施。

 5. 事業全体のフローチャートを作成し、全体の流れを確認。

 6. 介護用ロボットの導入効果を確認。

 7. 知財戦略の為の特許申請準備を行う。

 8. マーケティング戦略の策定。

 9. 事業の収益計画作成。(費用対効果の確認)金融機関による確認書取得。

  

3.取組の効果(改善点)

 1. 力を使わない介護技術という考え方に基づいた介助ロボットを活用することにより、利用者の残存機能が活用され脚力の維持・向上の効果があり、利用者の自立支援につながる事が期待できる。

 2. 機械の動力で持ち上げない為、利用者の身体状況による制限がなく利用できる。対象者の範囲が広がり、持ち上げることによる痛みは無く、積極的に利用が進むことが考えられる。その結果以下の効果が生じる。

(ア) 介助ロボットを活用することで、夜勤者1人でも、2人対応が必要な利用者のトイレ介助が可能になる。オムツ対応が不要となるので、利用者にとって経済的な負担が減る。

(イ) 要員代替効果により、介護職員1人の人件費約350万円を削減できる。

(ウ) 介護職員の肉体的負担が軽減され、腰痛予防や離職予防が期待できる。

3. 法人経営の安定性が増し、介護職員の給与の支給額アップが可能となる。

4. 力を使わない介助ロボットが広く認知されることで、介護業界のイメージアップにつながる。

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