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20人以上50人未満 有限会社 北陸甲信越・東海

事例No.0533

1.取組の背景

 

 これまで紙媒体での記録、スケジュール管理、日々の報告、介護報酬請求などの業務が管理者一人に集中しやすかった。業務が属人化していたと言える。そのため、管理者が不在の場合や引き継ぎが必要な際に、業務が滞ることがあった。紙媒体や電話での情報共有にはいくつかの問題があった。

 まず、リアルタイムでの情報共有が難しく、緊急時の対応が遅れることが懸念された。特に、訪問スケジュールや利用者の状態が急変した場合、迅速な情報伝達ができず、対応に支障が出ることがあった。

 また、手書きや口頭でのやり取りはヒューマンエラーが発生しやすく、伝達ミスや情報の抜け漏れを防ぐための確認作業に、手間と時間がかかった。

 さらに、紙媒体の記録は管理が煩雑で、情報が散在しているため、業務の引き継ぎや報告書類の作成にあたっても手間になる。これらの課題から、ICT化の必要性が強く感じられるようになった。

2.取組の内容

 70代の職員も在籍しているため、新しいシステムやツールの操作に対して不安や抵抗感を抱きやすいと考えた。そこで、改善策として段階的な研修を実施した。

 タッチパネルの操作に慣れていない職員は、正確にタップできなかったり、画面のスクロールなどの基本操作、アプリのインストールやアップデート、ログイン操作に慣れるまでに苦労する点がいくつか見られた。不慣れなために、ソフトの誤操作やデータ入力ミスが発生しやすく、その結果、記録や報告の正確性が損なわれる恐れもあった。

 そこで、まずは基本的な入力方法や記録の確認といったシンプルな操作からスタートし、徐々に慣れてもらうようにした。また、初期段階からサポート担当者を設置し、問題が発生した際にはすぐに質問・相談ができる個別指導の環境を整備した。サポート担当者が職員と一緒に手順を確認しながら操作することで、不安なく業務を進められ、誤操作や入力エラーを最小限に抑えることができた。

 その後、複雑な機能や応用的な使い方を段階的に学んでもらった。継続的なサポート体制を整えることで、システム運用の安定性が高まり、業務効率も向上した。
こうした取り組みにより、職員は少しずつ自信をつけ、システムへの抵抗感も軽減された。また、研修を通じて操作の成功体験を積み重ねることで、職員は日常生活でも新しいツールや携帯アプリを積極的に活用するようになってきた。

 

 電話や対面での業務上のやり取りをチャットツールに変えたことで、コミュニケーションの形が変わった。

 直接の対話の機会が減るという側面はあるが、いくつか重要なメリットも得られている。まず、チャットツールの大きな利点は、すべてのやり取りが記録されるため、過去の会話や指示を後から簡単に確認できることである。口頭や対面でのやり取りでは、どうしても記憶に頼る部分が多く、伝達ミスや記憶違いが発生する。しかし、チャットツールではいつでも確認でき、必要な情報を見返すことができるようになった。

 これにより情報伝達の正確性が向上し、業務上のミスや誤解を減らすことができるようになった。業務のスムーズな進行が確保されるようになった。

 さらに、コミュニケーションの効率化というメリットも大きい。対面や電話でのやり取りは、その場での対応が求められるため、相手の業務を中断させることがしばしばある。しかし、チャットツールを利用すれば、すぐに対応が必要ではない場合でもメッセージを送っておける。相手は自分のタイミングで確認することが可能である。これにより、双方の業務が効率的に進められ、互いの業務を妨げずに必要な情報を共有できるようになった。特に、急を要さない案件については、電話に比べて業務の流れを妨げない点が大きな利点である。
 このように、チャットツールへの移行によって、コミュニケーションの形が変わった。直接の対話が減るデメリットはあるものの、研修など対面の交流の場も設け、コミュニケーションを促進したいと考えている。

 

 スタッフのスキル向上と業務効率化を目的に、オンライン研修動画を導入した。この取り組みにおいては、高齢の職員を含む多様なスタッフが効率的に研修を受けられるように配慮した。研修内容については、介護の基本から応用まで幅広く網羅している。スタッフの経験やスキルレベルに応じて自分のペースで学べることが特徴である。

 こだわった点として、職員全員が平等に学習機会を持てるように、スマートフォンやタブレットを使った研修を推奨した。これにより、現場に出る前や業務の合間に学習できる柔軟な学習環境を整えることができた。

 苦労した点は、特にITリテラシーが低いスタッフに対して、動画視聴やシステム操作に不安を感じる声が多く上がったことである。これに対して、導入初期に時間をかけて操作方法の説明会を開催し、職員が自信を持ってシステムを使えるようサポートした。説明会では、操作手順を簡潔にまとめ、いつでも確認できる環境を整えたことが効果的だった。

 行き詰った点として、最初は一部の職員が「忙しいから動画を見る時間がない」と言って学習を後回しにするケースが見受けられた。これを改善するために、研修の進捗状況を定期的に各職員に伝えるようにし、全員が自分の進捗を意識できるよう促した。さらに、フォローアップを行うことで学習意欲を高め、継続して取り組める体制を整えた。

 結果として、全職員が自分のペースで学び、スキルアップを図ることができた。また、研修動画を通じて新しい介護知識を得たことで、職員のモチベーションが上がり、業務への取り組み姿勢が積極的になったことが感じられた。事業所全体での知識やスキルのばらつきが減少し、より統一されたサービス提供が可能となった。

 

3.取組の効果(改善点)

 介護ソフトやビジネスチャットツールに加え、オンライン研修動画を導入し、IT化に取り組んだ結果、業務効率が大幅に改善した。まず、介護記録や訪問スケジュール管理が紙媒体からデジタル化されたことで、入力作業にかかる時間が約30%削減され、月あたり約40時間の業務時間を短縮できた。これにより、スタッフは本来のケア業務に集中できるようになり、ケアの質の向上が期待できる。さらに、介護報酬請求業務の自動化によって、請求処理ミスが大幅に減少し、請求業務にかかる時間が従来の半分になった。

 また、ビジネスチャットツールの導入によって、スタッフ間のコミュニケーションも効率化できた。以前は電話や対面での連絡に時間を取られていたが、リアルタイムでの情報共有が可能となった。これにより、緊急時の対応が迅速化され、利用者への対応もスムーズになった。

 さらに、オンライン研修動画の導入により、職員は自分のペースでスキルアップを図ることができ、全体的な知識の底上げができた。職員のモチベーションも向上し、より統一されたサービス提供が可能となった。

 これらの取り組みで、属人化していた業務が解消され、誰でも業務を引き継ぎやすい体制が整い、全体の業務効率が向上した。

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