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事例No.0529
1.取組の背景
これまで主に事務業務を担当していたスタッフが家庭事情により半年間の休暇を希望した。仕事を引き継ぐ人材を探すことは難しく、この課題をどう解決するか考えた。
具体的な課題は、サービス提供責任者のシフト作成・変更・連絡に時間を要する、各種書類の確認等に要する時間が膨大となる、実績承認作業が月末に集中すること等であった。ヘルパーの課題としては、提出書類に要する時間と手間の負担、サービス開始時間に度々遅れる、ケア抜けが発生する等であった。書類の不突合により事務員とヘルパーとの人間関係も悪くなることがあった。
この状況を受け、事務効率化のためにICT導入を検討し、クラウド化になったことで手を出しやすいコストとなったシステムの導入を決定した。しかし、この決定が事務所の運営チームのみで行われ、現場のスタッフに事前相談がなかったことで、ミーティングでの発表時に、特に年配のスタッフから反対意見が多く出た。そのため、反対するスタッフにはICTの利用に関する説明とトレーニングを個別に行い、新しいシステムへの移行を進めた。
過去にも情報共有のための新しい取り組みに反対意見があったが、結果として良い成果を得ていた経験から、今回も良い結果が期待できると考えていた。
2.取組の内容
業務効率化とスタッフの負担軽減を目的として、ICT(care-wing+介舟)の導入を決定した。2つのソフトを同時導入したのは、実績を積み立てるものと国民健康保険団体連合会に伝送するソフトを連携させる事、基本情報の入力の手間、利益は変わらなくとも業務負荷が軽減されることをICT化の重要点と考えたことによる。導入前には管理画面デモを使用し、疑問点を解決していった。
他にもヘルパーが使いやすいかどうか、今負担に感じている書類の量を本当に軽減できるかどうかを確認した。実際にヘルパーがシステムを使用する前の2か月間は紙ベースと併用し、システムの練習を行なった。50歳代以上のスタッフは最初は操作で失敗することもあったが、代表が現場に行って直接指導した。また、ヘルパーが記録記入の時間を短縮できるように、決められたサービス内容は初めから管理側で登録し、現場では必要に応じて削除や新規登録をするようシステムを工夫した。
問題としては、端末の忘れ物や入退室の入力忘れがあったが、注意喚起と管理画面での訂正、ヘルパー自身によるICT詳細画面での操作を通じて、重要性を認識してもらうようにした。全スタッフが協力して運用を進めることができた。特に事務員が導入の段階から大いにサポートしてくれたり、ソフト会社も丁寧にサポートを提供してくれた。
3.取組の効果(改善点)
ICT導入により、サービス提供責任者の業務負担が軽減された。シフト作成や変更、連絡にかかる時間が大幅に節約され、以前は月末に集中していた作業も、ICTを利用することで日々完結できるようになった。ヘルパーにとっても、紙ベースでの記録提出の手間がなくなり、直行直帰が可能になった。ICT化により業務が可視化され管理者がケア時の状況をリアルタイムに把握できたことでケア抜けがなくなり、ケア品質の向上につながった。全体的に時間の節約と効率化が実現されたことで、サービス提供責任者も、ヘルパーも、現在のシステムに満足している。さらに、特定処遇改善加算や特定事業所加算取得にも効果があった。
システムの導入により人件費が削減できた。また、ペーパーレス化によって保管スペースに余裕ができ、1年分を考えて用意した印刷用紙もが3、4年は使用できる状況となった。
スマートフォンの普及により50代ヘルパーでも馴染みやすいシステムであり、新しいスタッフも問題なくシステムを使用している。働きやすさの向上により、女性パートの定着率は非常に高く、システム導入後の平成29年2月から令和6年1月の7年間で、退職者がわずか6名という極めて少ない数に留まっている。
他事業所や県外からの問い合わせもあり、同じシステムを採用した事業所も複数ある。当初反対をしていたヘルパースタッフの導入1年後のインタビュー映像があり、その中では「1年前の状態には戻りたくない」と発言している場面もある。システムの導入による業務効率化と利便性を実感していることを示している。この動画は、導入前後のスタッフの意識変化を直接的に示す貴重な資料で、他事業所のICT導入におけるスタッフ教育や意識向上のための参考資料として活用されている。