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50人未満 株式会社 関東

事例No.0518

取組の背景

令和4年2月に開業し、訪問介護サービスを行っている。令和5年2月現在、職員数は常勤5人、非常勤の登録ヘルパー6人、利用者はほとんどが事業所が所在する町の在住者で40人弱である。創業者の母が経営する居宅介護支援事業所が併設されている。
創業者は、介護労働安定センター(以下、センター)の令和3年度介護労働講習の修了生で、それまでに介護職の経験はなかった。しかし、母がケアマネジャーで居宅介護支援事業所を営み、妹が介護福祉士として施設で働いていることから、「将来家族で一緒に介護の仕事がしたい」という思いがあった。
その後、創業者家族の様々な事情が重なり、令和3年10月頃から訪問介護事業所を立ち上げる準備に入ったが、創業者本人は「開業手続きの仕方がわからない」という全く白紙からのスタートであった。
そうした折、センターの雇用管理コンサルタント相談のことを知り、開業地域のコミュニティ・ネットワークに詳しい社会保険労務士が担当専門家となり、その助言で行動を開始し、申請から僅か2ヵ月後の令和4年2月に訪問介護事業所の指定を受け開業に至った。開業時、職員6人(常勤2人(創業者を含む)、登録ヘルパー4人)、利用者3人からのスタートであった。
経営継続のため、職員の定着率向上・利用者確保が課題であった。

 

取組の内容

(1)職員の採用にあたっての雇用契約・労働条件の工夫

職員は登録ヘルパーを含めて全員、友人や知人を通じた口コミで集めた。常勤職員は令和5年2月時点で5人となったが、全員が子育て世代の女性である。介護職の経験がある人・ない人様々であるが、「もっと働きたい」という意欲を持ちながらも思い通りには働けないという悩みを抱えていた。
例えば、フルタイムで働きたいと望みながら、勤務条件が合わずパートタイムでしか雇ってもらえない労働者に対して、家庭事情に合せて社会保険に加入できる労働時間を確保できるよう勤務時間を柔軟に変形させる等、働きやすい労働条件を提示して賛同を得ていった。
また、事業所から近く通勤しやすい所に住んでいる人を採用するようにした。また、処遇改善加算も取得し、職員に公平に配分している。
一方、登録ヘルパーはケアマネジャーの紹介を通じて募集した。皆、60歳代以上のベテランヘルパーで他の事業所との掛け持ちだが、近隣に住み、サービスの余裕時間や隙間時間をうまく埋められるような契約条件で、双方がwin-winとなる関係を構築している。地元の事業所を応援する気持ちも強く、介護経験がまだ少ない常勤職員に対して、良い相談相手にもなってくれている。

(2)業務体制

 

開業から順調に利用者数が増えていく中でも、常勤職員には時間外労働や休日労働等は極力させないようにしている。一方で利用者へのサービスはどのような条件(日、時間等)でも“絶対に断らない”ことを会社の方針として掲げたため、利用者数が増加するにつれて経営者の業務負担がどんどん大きくなり、途中で限界を迎えた。
見かねた職員からの提案で、

  1. 特に注意して観察・管理が必要な利用者(10人程度)を常勤職員で分担し、主担当者を決めた(職員1人あたり、2人から3人の利用者を担当)。
  2. この利用者の中で特に重点管理が必要な6人に対して、利用者毎に専用のLINEを設定して情報を全員で共有した。
  3. 各担当者は、自分だけでは対応ができなくなった場合は、LINE等で他の職員に協力を求めることとし、相互に協力できる体制を構築した。
    このような工夫により、特定の職員に業務が集中するのを防ぎ、また各職員はサービス時間を融通しあうことで、自分の都合に合わせた働き方ができるようになった。

(3)職場のコミュニケーション

職場で2週間に1回“ランチミーティング”と称して、昼食の時間帯にその時事業所にいる職員全員で職場会議を開催している。文字通り、昼食を摂りながら、約1時間、皆で自由に様々な意見交換を行い、情報共有を図っている。少人数で、年代や家庭の状況、住む場所も近い職員ばかりのため、風通しの良い職場となっている。

取組の効果(改善点)

(1)利用者の増加と離職者ゼロ

開業から1年で、利用者数は最初の3人から40人程と13倍に増えた。町内のケアマネジャーへ開業の挨拶に回り、介護度やサービス時間帯等の利用条件で他の事業所が断るような利用者でも「絶対に断らない」という経営方針を伝えることで、徐々に紹介が増えていった。利用者を分担する体制に変えてからは、業務効率が大きく改善した。職員の定着率も開業以降の離職者は出ておらず100%を維持している。

(2)地域との連携

地域に根差した事業所として、町内の社会福祉協議会(地域包括支援センター)や自治体からの期待も大きい。住民の老齢化が進み、若者人口が減っていく町にあって、地元の若者世代が自ら事業所を立上げて、地域介護を担っていくことへの共感や「応援したい」という他の事業者の声もよく耳にするようになった。
IT系企業を経営する地域の町内会長は、事業所のロゴマークや名刺、チラシのデザイン作成、ホームページ作成等のいっさいを無償で引き受けてくれた。
創業者は当分は現状の規模を維持して、町周辺の利用者に特化して介護サービスの更なる質の向上に努めたいとの方針である。そのために職員も介護サービスに対して同じ考えを共有できる人で、仕事と生活を両立させながらより充実した仕事をしたいと望む人をこれからも採用していきたいと考えている。
もっと若い世代の人も採用したいと考えており、今後はホームページやSNSを使い、事業所の活動をPRしていく意向である。

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