雇用管理サポートシステム

事例No.488

○訪問介護の職員数(規模):20人以上50人未満 ○法人形態:株式会社 ○地区:九州

取組の背景

◆サービス提供責任者の業務負担

 介護サービスの需要と供給が合わない状態があった。営業をしなくても利用者からの依頼があるため、人手不足の中、サービス提供責任者自身も常勤ヘルパーと同じように現場へ入らざるを得ない状況となり、月を追うごとに人員配置自体が困難な状況になっていった。本来のサービス提供責任者の業務が追いつかず、時間外に処理することが常態化していた。勤務時間の超過分を他の勤務日に半休を取得させる等の工夫をしたが、長期的に、それすら困難な状況に陥ってしまうのではないかという懸念があった。

◆人材確保と定着

 非常勤ヘルパーも高齢化しており、稼働率が悪い状況であった。介護業界の深刻な人材不足は弊社も例外ではない。求人誌等に掲載するも応募がない状況で、数多く掲載されている介護求人の中に埋もれてしまったのではないかと感じた。

取組の内容

◆サービス提供責任者の業務負担の軽減

 平成27年より、サービス提供責任者でなければできない業務以外について、一部の事務業務を担ってもらう介護事務を専属で採用した。常勤ヘルパーも事務業務を分担し、当該業務についてサービス提供責任者はチェック機能程度に抑え、時間的な負担軽減に繋げた。業務の例としては、実績報告後の提供票やモニタリングシートのファイリング及び整理、非常勤ヘルパーの給与計算や利用者からの集金等である。

 また、職員の能力によるところであるが、資格要件を満たし、適正があると認められる職員をサービス提供責任者に登用することで人数を増やし、サービス提供責任者一人当たりの担当利用者数を分散させた。

 その他、正職員は公休日を完全週休二日制にし、非常勤ヘルパーにも有給を積極的に取得してもらうようにした。

◆人材確保と定着

 人材確保に関しては、求人案内等に掲載してもなかなか応募がないので、現在勤務している常勤・非常勤の職員を通し、クチコミ手段にシフトした。当然、弊社の待遇や働きやすさを感じていなければ人は人を呼ばないため、勤務するに至るまでのバックアップ体制や研修制度を充実させ、安心して働けるような環境の整備に取り組んだ。異業種からの転職、或いは無資格で働くことができていた環境からの転身で働きたいと希望した方は、面接時に弊社の理念と求職者の思いを確認し、お互いに納得した上で採用とした。
無資格で採用した職員は、介護職員初任者研修の資格取得費用を会社が負担し、介護現場に入るまでのサポートを行った。入職後は一定期間の勤務を経て、職員の意欲や適性により、介護職員実務者研修や介護福祉士、認定介護福祉士に向けたステップアップ等のフォロー体制も整えた。資格取得以外でも社内外における研修制度を充実させ、学びを深める機会を作りスキルアップすることで質の高い介護従事者の育成に力を入れている。

 取り組みのポイントは、研修会受講は「公休日等の勤務時間外に」や資格取得については「実費負担させて」とすることはなく、「勤務扱い」「費用は会社負担」で行っているということである。
表面的にみれば、至れり尽せりのような印象を持たれるかもしれないが、そうすることによってそれは、職務となり使命となり、程よい緊張感を持って取り組んでもらえることとなる。学びを確実に身に付け、他の職員にも良い影響を与え、会社に良い結果をもたらすというサイクルを継続することで、強い組織に変容させていく。
諸々を単に経費として捉えるのではなく、費用対効果を考え、人に投資する姿勢で社員教育を実践している。

取組の効果(改善点)

◆サービス提供責任者の業務負担の軽減

 サービス提供責任者は、現場過多、或いは終始、事務的な業務のみ行う状態であったことが解消され、適度に現場に出ることで利用者と関わりを持ち、且つ事業所内での業務に取り組む時間の確保もできるようになった。

 常勤のヘルパーは現場で起こるヘルパー業務しか知り得なかったが、書類を扱い、介護保険制度のルールを知り、どのような流れでサービスの提供が行われているかを学べる機会となったことで、二次的効果として職員の質の向上にも繋がった。

◆人材確保と定着

 家庭の事情や健康上の理由で退職せざるを得なかった職員も幾人か存在しており、安定している状況とまでは言えないが、ここ数年で人員増の結果は出せている。
研修制度については、月に一回の頻度で行われる事業所内研修で外部講師を招き、専門的に学ぶことで、管理者やサ責、介護職員全員が一定のレベルを保つことができている。

 また、全員が職務についてあらゆることを共通認識することで互いに研鑚努力し、成長に繋がり、その結果、安定したサービスの提供が行えるようになってきている。
事業所外の研修には職域に合った職員に参加してもらい、学びを深めるごとに日常業務で的確な指示や指導が行えるようになってきており、組織全体が成長している。