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20人未満 株式会社 関東

事例No.0509

取組の背景

当事業所は、株式会社で平成21年8月開業、高齢訪問介護、障害居宅介護・重度訪問介護等のサービスを行っている。職員は常勤3名(管理者1名(代表兼務)、サービス提供責任者2名(以下「サ責」という)、非常勤ヘルパー10数名程度の小規模な事業所である。会社にケアマネジャーはおらず、外部からの紹介・依頼で利用者サービスを提供している。

令和3年夏に管理者が同居家族を介してコロナウィルスに感染し、状況から即日入院となった。ヘルパー職員1名も濃厚接触で自宅待機となった(陰性)。さらに事務所は、管理者の自宅1階を使用していたため、一時閉鎖となった。以後、管理者が復帰するまでの1ヵ月半に渡ってその状態が続いた。しかし、その期間、他の職員同士の連携と日頃より準備していたコンティンジェンシープラン(※)の発動によって、ほぼ通常通りの介護サービスを継続し、経営的にも大きな損失を出す事なく危機を乗り切った。

(※)コンティンジェンシープラン・・緊急時に損害を最小限に抑える為の計画

取組の内容

管理者は、大手介護企業に従事した経験があり、そこで学んだ経営や労務管理についてのノウハウと、開業後の自らの体験に基づいて、今回の事故発生前に以下の危機管理体制を構築した。

①管理者不在時の体制

管理者は以前、入院した時の経験から、管理者が急に不在となった場合の対策として、常勤サ責2名が管理者の代りとなる体制を整えた。当事業所は介護サービスの稼働率が非常に高く、非常勤ヘルパーがほぼフルタイムに近い勤務シフトで動いており、サ責も人が足りない時に現場のサポートに入る仕組みとなっている。そのため、現場の状況を詳しく把握しており、実際、今回の管理者不在の間も2人で分担して業務管理を代行した。

②事務所が使えなくなった時の対応

事務所のスペースが、常勤職員とヘルパーが在室している時に十分なソーシャルディスタンスを確保できないという問題があった。そのため、向かいの集合住宅の一室を借りて、ヘルパーの詰所兼休憩室として使用できるようにしていた。今回の事務所閉鎖に際し、その一室を活用して管理機能を停止することなく業務を継続することができた。

③業務のIT化整備

3年前に電子システムを導入、全員がモバイル端末から介護記録を入力可能としている。勤務管理関係もほとんど電子化されている。また、職員間の連絡もモバイル端末で共有できる仕組みになっており、日頃から各利用者の介護情報に関する報・連・相や情報共有ができている。

④職員間のコミュニケーションと連携体制

利用者の介護計画等に関して管理者、サ責、ヘルパーがお互いにモバイル端末を通じて活発に意見を出し合う関係ができており、急な予定変更、職員の欠員等が生じた時も他の職員が声を掛け合いカバーする体制が構築されている。今回の危機の際も、「正月シフト(人員が少ない時に稼働できる職員で非常時体制を敷くこと)」で1か月半を乗り切った。

⑤日常のケアに対する備え

当事業所は、開業当初から職員全員にケアパック(介護ケアに必要な防護具、消毒液等の道具一式)を配布し、介護の際には常に携行させていた。それらの備品も事務所に予備を常備しており、使用したら補充する仕組みとした。そうした日常からのケアに対する危機意識が、今回のコロナ感染前から職員全員に行き渡っていた。

取組の効果(改善点)

1ヵ月半に渡って、コロナ禍による管理者(代表)の不在、事務所の一時閉鎖に見舞われたにもかかわらず、その間、残りの職員の連携によってサービスの質を低下させることなく、通常通りの介護サービスを利用者に提供し続け、売上高にも大きな損失を出すことなく事業を継続できた。

管理者は、介護事業経営にとって人員稼働率(労働生産性)が最も重要な要素であることを熟知している。通常のサ責、非常勤ヘルパーらのサービス稼働率はフルに近く、売上高(介護報酬等)実績もそれを反映して事業所の(人員)規模に対して高い(1人当たりの売上高が極めて高い)。そのため職員の給与も常勤サ責はもちろん、非常勤ヘルパーでも高い者が多数いる。職員の勤続年数も長く、定着率も良好(独立するために退職した職員がいる程度)で、職務に対するモチベーションも高い。

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