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事例No.0506
取組の背景
本法人は「ほっとする」「あったかい」「助け合い」「愛」を理念に掲げ、地域相互扶助を軸に新しい地域の担い手として活動してきた。
通所介護を閉め、新たに訪問介護、居宅介護支援事業所をスタートさせた。それに伴う新体制の下、直面する問題として、正規職員が定年を迎え退職すると、その補充採用がうまくできない点があった。地元のハローワークに求人を出しても応募が全くない。また、運よくパートを採用できたとしてもその育成には、相応の時間、労力、費用を要する状況で、定期的な新規職員の採用をもって新陳代謝を図ることができなかった。
従来の就業規則において定年を66歳と定めていたが、新規職員の採用ができない状況下で、定年を迎える職員を継続雇用することとした。しかし、法人として雇用に係る様々な法的問題や労務のトラブルへの漠然とした不安を抱えていた。
当該職員は、介護サービスを提供していくうえで職場の中核的役割を果たせることから、法人としては職務内容と権限を大きく変更することなく、雇用継続することを望んでいた。更に次年度以降も定年予定の正規職員がおり、定年に達した有能な職員をスムーズに継続雇用できる体制を整えたいと考えていた。特に以下の点について問題点を整理する必要があった。
- ① すでに定年を迎えた職員に対して、第一に何をするべきか
- ② 定年の延長、もしくは定年を廃止することについて
- ③ 定年後の継続雇用のための再雇用に係る就業規定(嘱託規定など)を創設すべきか
取組の内容
① 定年を迎えた職員に対しての対応
従来の就業規定では、「定年に達した者でも、本人が希望し、解雇事由、退職事由に該当しない者~」であれば、選考の上継続雇用する旨、定められていた。まず当該規定に沿って当該職員と以下の面談を実施し、勤務継続に係り身分・労働条件の曖昧さの解消を図った。
本人の意思確認⇒会社選考⇒継続雇用決定⇒新たな労働条件通知書の交付
②「定年延長」もしくは「定年の廃止」のどちらを選択するかについての検討
介護労働安定センターの雇用管理コンサルタントとの相談を踏まえて、「定年の延長」や「定年の廃止」ではなく、「新たな嘱託規定の創設」をすることで「定年後の再雇用」を選択し、外部の社会保険労務士に就業規則の改定案の作成を依頼した。理由は、定年後、職員の高齢化が進み、心身の不調や認知症の発症、仕事に対する価値観の変容などに伴い、以前の職責を担えなくなる場合を想定したためである。定年を迎えた職員の状態を確認しながら、定年後の再雇用としてフルタイム勤務だけでなく、短時間勤務や隔日勤務などの働き方の選択肢を用意することとした。
③ 新たな嘱託規定「定年退職後継続雇用規定」を創設し、職員に周知した
「定年退職後継続雇用規定」において、定年後再雇用職員の地位として「キャリア職員」を設定した。「キャリア職員」は、一年毎の有期労働契約とし、70歳まで働くことができる継続雇用制度とした。「労働条件や賃金」等に加えて「キャリア職員契約の更新に係る判断基準」を定め、継続雇用ルールを明文化し、職員に周知することで透明化を図った。なお、「キャリア職員」という呼称は、職員からの提案で決まったもので、介護スキルに敬意を表して命名された。
取組の効果(改善点)
・雇用関係の明確化による不安感の解消
雇用管理コンサルタントへの相談で課題の整理がされたことで、外部の社労士を活用し、定年後の働き方に関する就業規定が整備され、管理者においては労務トラブルへの不安が解消された。他方、職員側にとっても定年後も継続して働き続けられる安心感が生まれた。更に、本人の希望、心身の状態にあわせて多様な働き方を話し合いで決められることで、管理者、職員間の信頼関係の醸成・強化に繋がった。
・再雇用職員のプライドを尊重した待遇面の配慮によるモチベーションアップ
本規定では給与面において、定年前と同水準の職務・職責を担う勤務条件で更改すれば、金額が大きく下回ることはない。定年後も職務・職責に見合った給与水準が保証されることで、職員の士気が上がったと感じている。
・中堅職員の定着化への寄与
令和4年度に定年を迎える職員も本制度による継続雇用を希望しており、介護職員の新たな採用が困難な環境において、管理業務、介護ヘルパー業務双方に精通する中核職員の確保・定着に道筋をつけることとなった。当法人は、常勤7名、パート5名規模で運営しているが、「キャリア職員」制度の創設後、離職者ゼロを続けている。